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その魂に祝福を
魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方2
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るのは嫌あああッ?!』
 というのは、アルフの戯言だったはずだが。
「アイツ、えらく禍々しい発想しやがるな……」
 ヘドロのようにまとわりついてくる海面を何とか引き千切り、岸へと自分の体を引きずり上げる。生きたまま皮膚を失った挙句、塩水に漬かった身としては、その低度で余計な激痛から解放される訳もないが。
(クソッ……)
 激痛に耐えかねてこのまま心臓が止まってくれればいい。正直に言えば、そんな誘惑を感じないでもなかった。そもそも皮膚というのは体温調整や免疫機能に関与する人体最大の器官だ。それを丸々失えば即死ではなくとも間違いなく致命傷となる。そのうえでさらに、肩から胸にかけて袈裟斬りのように引き裂かれていた。おまけにあの高さからの自由落下。一応防御はしたが――それでも、カチ割られた頭がまだ痛む。しかも、その全ての傷に塩が入り込んで余計に痛みだしているのだ。これでまだ生きているのだから、不死の怪物の面目躍如といったところだろう。もっとも、
(魔力の消耗が激しい。血が足りない……)
 自分の不死性は基本的に特殊な呪血によって支えられている。もちろんそれが全てではないが、原則として傷の回復には『マーリン』の血――不老不死の力が込められた呪血が必要となる。そういう意味ではジェフリー・リブロムの不死に近いと言えるだろう。恩師が自分で『マーリン』の血を精製できるようになったようなものだ。
 ともあれ、その呪血の生成には魔力が必要であり、効果を発揮する度に代償として血が失われる。消費される血と魔力と、それにより回復する血と魔力が釣り合っている、もしくはさほどの差がなければ問題はないが……。
「代償がある以上、簡単にはいかないか」
 代償による損傷は、ジェフリー・リブロムの不死をもってしても癒すことは極めて難しい。そういう法則だ。だからこそ、癒すには特別なイカサマが必要だった。イカサマをする方法はいくつか心当たりがあるが……偽典リブロムは、その代名詞となるだろう。
 何であれ、結論としては相棒と合流しなければこの傷は癒せない。ただそれだけだ。
 まして心臓を破壊されている今、血の循環など望むべくもない。むしろ大量に失ってしまっている。状況としてはかなり面倒な事になっていた。
(無理が効かない状態で、治せない傷まで無理やり治そうとしているからな……)
 だからこそ、こうして余計に魔力や体力を無駄に消耗する羽目になる。だが、なのはの現状が分からない以上、リブロムを召喚する訳にはいかない。
(いや、他にも方法がない訳じゃあないが……)
 イカサマの度合いなら、俺自身の体質も大概なものだ。自分が宿している『力』を活性化させてやれば――例えば、『マーリン』の不死性を前面に出してやる事が出来れば、さすがの代償といえどもいつまでも身体にまとわりつけない。と
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