第十三章 聖国の世界扉
第六話 償えない罪
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せていた目を上げコルベールは逆に問を投げかける。
コルベールの問いに、士郎は数瞬の僅かな間を置いた後応えた。
「……教皇、ですか」
「ふ、はは……やっぱり君は凄い。どうしてわかったんだい?」
「用事があると言って教皇は自分たちを置いて先に部屋を出て行きましたから。まあ、だからもしかしたらと思って」
「当たりですよ。そう、わたしを呼び出した方は聖下だった」
「理由を聞いても?」
一介の学園の教師を、何故わざわざブリミル教の頂点にいる教皇が呼びつけるのか? そんな理由いくら考えても思いつくはずがない。コルベールは士郎の疑問に納得しながら、今はもない“ルビー”を入れていたポケットの上に手をやった。
「……わたしが預かっている物を返してくれないかと言うことだったよ。まあ、こちらも元々そのつもりだったし、直ぐに返したがね」
「預かっていたもの?」
「“炎のルビー”と、聖下は言っていたね」
「……」
“炎のルビー”その言葉を聞き、士郎は押し黙った。似たものを、士郎は目に、耳にしてきた。そして、その所有者には共通点があった。それは理解している。しかし、何故、そんなものをコルベールが持っているのか?
考え込む士郎に気付かず、コルベールは問われる前にその答えを自ら語り始めた。
「“炎のルビー”は、ね……過去に、わたしがこの手で……炎で焼き殺した女性が持っていたものだったんだが……その方というのが、実は教皇聖下の御母君だったんだよ。“運命”と思ったね。シロウくんに頼まれて、偶然このロマリアに来て、初めて聖下にお目通りし……驚いたよ。今でもハッキリと思い出せる……わたしが焼き殺した女性にそっくりだった……。初めは『まさか』と思い半信半疑だったが、聖下に呼ばれた時、確認してみると間違いないとのことだ……わたしは本当の大罪人だよ……なにせ教皇聖下の御母君を焼き殺したんだ……」
両手を顔の前まで上げたコルベールは、広げた掌に目を落としながら低く重い声で囁くように話している。その声は、後悔と悔恨で作られたかのように聞く者の心に痛みを感じさせた。
「正直、ここがわたしの死に場所だと思ったよ。こんな偶然はない。聖下に裁かれここで死ぬ運命なんだと……。だから、聖下に『あなたの御母君を殺したのはわたしです』と伝え、聖下のお裁きを頂こうした―――」
断頭台を望むように、首をさすっていたコルベールの手が突然止まり、力なく垂れた手がテーブルにドサリと落ちた。
「―――しかし、聖下はわたしを裁くこと無く、それどころかわたしの罪を許し、祝福さえ授けた……わからない……何故、聖下はわたしを許されたのか……何故、裁いてくれないのか……」
『ハハハ……』と乾いた、罅が入ったかのように口を開き笑ったコルベールは、テーブルに
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