第十三章 聖国の世界扉
第六話 償えない罪
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の……わたしの過去を知っているそうだね」
「大体はですが……詳しいことまでは」
「そう、ですか……」
小さくため息を漏らしたコルベールは、出した息を戻すのに合わせ、ティーカップに残っていたすっかり冷えた紅茶を一気に飲み干した。ソーサーにやや乱暴にカップを戻したコルベールは、視線をテーブルに落としたまま士郎に話しかけた。
「……シロウくんは、罪を償う機会を失った者が今後どうやって罪を償えば良いかわかるかい?」
「コルベール先生?」
士郎の怪訝な顔を他所に、コルベールは視線を遠く、今ではない過去へと向けながら語り始める。
「……わたしが学院に来る前に所属していた組織は、まあ、一言で言えば汚れ仕事だね。あそこでは、本当に色々な事をした……公に出来ない犯罪者の処分、危険な幻獣の駆除、他国のスパイへの拷問……国と言うものには、いや、一定以上に大きくなった組織には、そういった汚れ仕事が絶対に必要なものだ。まあ……絶世の美女も絶対にトイレに行くのと同じようなものだね……。つまり、わたしがいたあの組織はトイレみたいなものだ。臭くて汚いものを、世間から隠れて処理する……良識あるものならば誰もが拒否するような仕事だけど、誰かがやらなければならない仕事。まあ、でも、当時のわたしは、そんな仕事でも、ほんの少しだけですが誇りというものを持っていたんですよ。こんな汚れ仕事でも、国のためになっていると……あの時までは」
苦笑、と言うよりも、疲れきった顔が偶然笑っているように見えたかのような奇妙な顔を士郎に向けたコルベールは、テーブルの上に置いた手で拳を作ると、ギリリと握り締めた。
「……あの日、指令があった。とある感染力の高い致死性の病気に感染した村があり、感染が広がるのを防ぐため、全て焼き払えと……ここで感染を防がなければ、数え切れない程の死者が出ると―――ですが、それは真っ赤な嘘だった。しかし、それがわかったのは、全てが終わったあと……生き残ったのはたった一人の少女だけ」
スッ、と首筋を撫でたコルベールは、口元に小さな自嘲めいた笑みを浮かべていた。
「……わたしが今もこうして生きているのは、破壊しか出来ないと言われる火系統の使い手に新たな道を作るため―――等と口にしていますが、実際は、いずれ振り下ろされるだろう復讐の刃にこの身を捧げるまでのただの言い訳なんですよ。そう……ただの建前でしかない」
ポケットから何時か授業で使った“愉快な蛇くん”を取り出したコルベールは、ゴミでも捨てるかのように床に放り投げた。ガシャリと音を立て“愉快な蛇くん”が床を転がる。
「……なのに、何時まで待っても復讐はこない」
「何か、あったんですか?」
「晩餐の途中、わたしを呼び出した人が誰かわかるかね?」
士郎の質問に、伏
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