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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第六話 償えない罪
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い手を狙い続けることから、少なくとも他の担い手の抹殺が共通の目的であることは間違いはないだろう。ならば、虚無の担い手が三人も揃う式典を狙ってくるのは間違いはない。そして襲ってきた中にいるだろう虚無の使い魔である“ミョズニトニルン”を捕らえる。
 ガリア王ジョゼフが知れば、どんな方法を取るにせよ、間違いなく手を出してくる事はわかっていた。
 “無能王”と誹られるガリア王ジョゼフであるが、詳しく調査すれば、実はそうでないことがわかる。確かに一見すればその行動はまるで子供のように無茶苦茶。金の使い方も、人の配置もそうだ。一年持てば良い方だと、ジョゼフが王位についた際、周りの者はそう思った程だ。しかし、三年経った今でもガリアは強国のままである。それは勿論、元々のガリアの強大さもあるが、それだけではない。一見滅茶苦茶に見える采配であるが、ジョゼフはギリギリのラインで破綻を切り抜けていた。その際にとった方法は、口に出してはとても言えないようなとても褒められるような方法ではなかったが。それでも、ジョゼフは曲がりなりにも国を存続させていた。
 様々な調査によって手に入れた情報から、ヴィットーリオはガリア王ジョゼフが、世間で言われるような“無能王”では決してない事を理解していた。
 否―――無能どころか、狡猾で残忍な、まるで蛇のような男だとさえ考えていた程だ。
 そんな男が三人の虚無の担い手が揃っていると知ればどうするかは火を見るよりも明らかである。罠だと理解しながら、しかし確実に手を出してくる。どんな方法を取ってくるまではわからないが。だが、手を出してくるのは確実、そしてその中には虚無の使い魔である“ミョズニトニルン”がいる。
 その時こそ、“ミョズニトニルン”を捕まえる絶好の機会。
 虚無の担い手の最大の手駒である“ミョズニトニルン”を捕まえさえすれば、相手の力を半減させたも同然。機を見て交渉に持ち込み、ガリア王ジョゼフを廃位に追いやる事が出来れば完璧だが、最低でも手出し出来なくすることは、決して不可能ではない。
 だから、とそう言って、ヴィットーリオは士郎たちにその作戦への協力を求めてきた。
 対しての士郎の返信は―――『保留』であった。
 “聖戦”の話とは違い、三日後と時間が迫ったこの作戦については、早急に答えて頂きたいとのことで、ヴィットーリオはその答えを明日また聞くと言い、大晩餐室を出て行ったのだが……。
 予想通りのものもあれば、完全に予想外のものがあり……山積みになる問題を前に、士郎は酷い疲労感を感じながらもこれからの事を考え始め―――

「―――さて、どうするか……」

 ―――天井を仰ぎ見ながら、今日何度目かのため息を吐いた。





 ―――深夜。
 士郎たち一行がロマリアに入国し、もう直ぐ一日が終わろうとし
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