第十三章 聖国の世界扉
第六話 償えない罪
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避の死である筈の七万の軍勢に対し、男は“数え切れない無数の剣が突き刺さった荒野”を出現させ、これを持って不可能を打倒した。
撤退に追いやられた兵士皆口を揃えて言った。
『荒れ果てた大地』『無限の剣』『赤い空』―――『赤く染まった、何処までも続く無数の剣が突き立つ枯れ果てた荒野』―――そこに、男は立っていた、と。
証言するものは七万近くいるが、その話を聞いたものは誰もが否定する。
強力な幻術にでもかけられたんだと。
何かの理由で同士討ちでも起きたのだろうと。
それも仕方の無い話だ。どう考えても一人の男が成したとは到底思えない。
だからこそ、目の前で見たと言う兵士の話を聞いた者たちはそれを信じる事はなかった。
しかし、各国の上層部は違った。
様々な調査、照会、検証、収集により、その荒唐無稽の話が『真実』であると判断したのだ。
そしてそれはトリステイン王国の女王アンリエッタも同じであった。
つまり、衛宮士郎が何らかの魔道具? 魔法? を使い、七万の軍勢を潰走に追いやったと。
その真偽を判断するために手に入れた情報の中に、先程教皇が口にしたものと似たようなものを耳にした覚えがアンリエッタにはあった。今にして思えば、ヴィットーリオとジュリオには、何処か士郎を警戒していた節があった。ハルケギニア最大の権力を持つ教皇が、あの戦争で士郎がどうやって七万の軍を撤退に追いやったかを調査していない筈がない。
だから、彼らは疑っているのかもしれない。
衛宮士郎が、彼らが恐る“ナニカ”なのではないかと……。
そんな疑いが生まれるほど、士郎があの戦争で見せた“力”と教皇の話は似通っていた。
しかし、そんなことが有り得るのだろうか?
教皇の話では、その問題となるものが数千年前のものならば。今、この場にいる士郎と、何らかの関係性があるとは到底考えられない。
だが、ハッキリと否定できるほど、アンリエッタも士郎の事を知らなかった。
実のところ、前々から士郎についての調査は行っていた。
だが、その結果はルイズの使い魔となる以前の事は全くの不明。どれだけ調べても、爪先ほどの痕跡もなく。もはや本人から直接問いたださなければ分からないと言う程であった。
しかし、アンリエッタは士郎に問いただすことはなかった。
それは、士郎に特別な感情を抱いていると自覚した後も同じであった。好きな人のことを知りたい。それは誰しも思う事であり、アンリエッタも例外ではない。しかし、アンリエッタは士郎に聞かなかった。
何故か?
それは、別に身分や年の差、友人関係等と言ったものが理由ではなく。
とある“夢”が原因であった。
時折、不意に思い出したかのように見る“夢”。
空に浮かぶ一つの月の下、見たこともない
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