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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第六話 償えない罪
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しい』」

 (コルベール)自身が誓った。
 その思いを。

『―――しゅごいッ!!? かんぺきです、このやきぐあいッ!!』

「―――あ」

 コルベールの脳裏に遠い過去の記憶が―――幼い少女の歓喜の声が一瞬蘇った。
 あれは―――何時の事だっただろうか。
 色あせた遠い記憶に思いを馳せるコルベールの耳に士郎の言葉が触れる度、欠けたピースを嵌めるかのようにあの頃の記憶が鮮明になっていく。

「あなたの研究は、何時か、誰かを救うことになる。それは“命”かもしれないし、“心”かもしれない。そのどちらかもしれない」

『ん? え〜と、んぐんぐ……んく。んと、“ひ”は、すごいとおもいます』
 ―――わたしが、まだ教師になる前、オスマン氏に教師にならないかと誘われていた頃……一人の少女と出会った。

「そん、な、あれはただの言い訳でしか」
「言い訳でも建前でも結構」
「え?」
「あなたが納得するかしないか、そこが重要だからな」
「し、ろうくん」

『だ、だって、かちかちのパンをこんなにおいしくできるんだもん。それに、このパンをやくのにも、ひをつかうんでしょ?』
 あの子は、確か……そう、ガリアから来たと言っていた。美味しいものが大好きで、トリステインの美味しい物を食べるため、仕事でトリステインに行く両親に付いてきたという貴族の少女だった。
 出会った切っ掛けは何だったか?
 お腹が減って動けず道端でうずくまっていた彼女に声を掛けたのが切っ掛けだったか?
 屋台の匂いに誘われ外に出たはいいが、道に迷い、更にはお金も持っておらず、どうしようもなくなって道端に蹲り泣いていた少女。傑作だったのは、迷子から不安で泣いていた訳ではなく、単にお腹が減って泣いていたという点だ。
 あの時、丁度懐に学院の食堂から持ってきたパンとチーズがあった。
 だから、わたしは炎で軽くパンとチーズを炙って彼女に手渡したのだが―――あの子はわたしの炎で炙ったパンを口にし、感嘆の声を上げ―――。 

「ま、誰かに裁かれるなんてのに比べれば、かなり時間が掛かるが……あなたの研究は、それこそ時代を救う可能性もある」

 椅子から立ち上がった士郎は、床に膝を着き座り込んでいるコルベールの前に立つと、悪戯っぽい表情を浮かべ手を差しのべた。

『―――だから、おじさんの“ひ”はとってもとってもすごいです』
 ―――見ているこちらが幸せになるほどの笑顔で笑ったのだ。

「だから、今はその“罪”を抱えて頑張ってくれ―――“先生(・・)”」
「―――っ、はっ、はは」

 士郎の言葉と、そして思い出したあの少女の笑顔が、一瞬コルベールの思考を空白にした。
 胸を満たす暖かい何かが溢れ、大きく息を吐いたコルベールは、一つ大きく鼻を
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