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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第六話 償えない罪
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ばし硬直した後、ガクリと膝を床に落とし膝立ちとなったコルベールは、呆けたように開いた口元から乾ききった笑い声が漏れ出した。

「……は、はは……“救われたい”、ですか……確かに、そう、かもしれませんね」

 両手で顔を覆ったコルベールは、自嘲しながら可笑しくてしょうがないとでも言うように、引きつった笑い声を上げ続ける。

「口では『罪を償いたい』と言いながら“救われたい”等とは……本当に、わたしは救いようがないですね」

 このまま自死するのではと心配になるほど弱った様子を見せるコルベールに、士郎の静かで穏やかな声が掛けられた。

「……だから、償うことはできない」
「シロウ、くん?」

 その言葉に含まれるものに、コルベールは思わず顔を上げた。コルベールの絶望に染まった心を揺り動かしたのは、言葉に含まれた優しさ等ではなく―――苦笑混じりの自嘲だった。

「結局は、その人の心の持ちようでしかない」

 顔を上げ自分を見つめるコルベールに自嘲めいた苦笑いを見せた後、士郎は窓越しに見える変わらぬ美しい夜の空に視線を向けた。

「例え許しを得たとしても……例え望んだ罰を受けたとしても……当の本人が納得しなければ何時までも“罪”というものは消えない」

 窓の向こうに広がる、闇の中に浮かぶ数え切れない星の輝きと、二つの大きな月を見る。

「“罪を償った”と納得しない限り、どんな罰も、許しも、何の意味もない」

 士郎の視線に誘われるように、コルベールも窓の外に広がる星空を見上げる。夜空に輝く星は、何処で見ても変わらず美しい。

「心の内から生まれるものは全てそうだ……自分が納得しなければ決して消えたりはしない―――“罪”も、そして―――“復讐”も」

 士郎の視線が一瞬だけ、チラリとドアへと向けられた、それは本当に一瞬であり、間近にいたコルベールさえ気付かない程度のものであった。

「あなたにとって、被害者か、またはその身内から裁かれるのが一番納得のいく償いだったのだろうが、それが出来なくなった今、別のナニカ(償い)を見つけるしかない」
「……君にとって“人を救う”ことのようにかね」
「……」
「そんなもの……見つかる訳が……」

 士郎のように苦笑いを口元に浮かべながら顔を戻すと、士郎も同じくコルベールを見つめていた。二人の視線が交わり、直ぐに離れた。視線をずらしたのは、コルベールの方だった。
 視線を下に向け顔を左右に振ったコルベールの諦め切った様子に、士郎は目を細めると口を開いた。 

「―――もう、見つけているのでは?」
「え?」

 顔を上げたコルベールに、士郎はニヤリと笑みを浮かべると、コホン、と一つ咳払いをし、それを口にした。

「『炎を司るものが、破壊だけでは寂
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