第十三章 聖国の世界扉
第六話 償えない罪
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ば、『そんなのは、『たら、れば』の話じゃないか』」
「……シロウくん―――っっ、っし、しかし! しかしだ! 現実にこのわたしの口が呪文を唱え、この手で杖を振り、皆を焼き殺した! 焼き、殺してしまったんだ……」
ガタンッ! と椅子を蹴倒し立ち上がったコルベールが、青ざめた顔で唾を飛ばしながら震える手を眼前に掲げた。怯えたような目で見つめる先の自身の両手。彼には、一体何が見えているのだろうか。罪なき民を殺した自身の炎か―――罪なき民の赤い血か―――。
そんな今にも悲鳴を上げて倒れそうな姿のコルベールを。士郎は静かな眼差しで見つめながら問いかけた。
「あなたは、なぜ、罪を償いたいんですか」
そもそもの根本を―――何故、罪を償いたいのかを。
士郎の問いに、コルベールは何故か直ぐに答えることはできなかった。
答えなど初めからわかりきっている筈だ―――自分は殺したのだ―――罪なき人を。
ならば、裁かれるのが道理―――裁かれなければ、ならない。
わかりきっている事―――なのに、何故か、その一言が口から出ない。
―――何故?
「……それは」
それは―――
「楽になりたいだけなのでは?」
「―――ッなっ!?」
士郎の信じられない侮辱に、コルベールは一瞬にして青ざめさせていた顔を一気に赤く染めた。
怒りの余り思わず杖に伸ばしかけた手を止めたのは―――
「復讐者に断罪され、死んで楽になりたいだけじゃないのか」
同じく、士郎の言葉だった。
「そ、そんな筈は―――そんな馬鹿な話が―――」
叱責のように強くも厳しくもない、それどころか優しげにさえ感じられる声で、残酷な言葉を告げる。
そう、そんな事は―――もう、ずっと昔からわかっていたこと。
彼の言っている事は、間違いなどではない。
だから―――
「なら、何故そこまで裁かれるのを望む」
「―――それは、わたしが罪人だから、償わなければ」
―――わたしの声はこんなにも弱く、小さく……。
「『許す』と言われたんだろう」
「―――ッ」
―――こんなにも、脆い。
「なら、そこで終わりの筈だ」
フラフラと力なく膝が揺れているコルベールに向け、士郎はハッキリと伝える。
何故、コルベールがこうまで裁かれるのを望む理由を―――そんなものはわかりきっている。
何故ならば、自分も同じだからだ。
自分も同じように―――。
「『許す』と言われながら、そんなにも裁かれるのを望むのは―――コルベール先生。あなたは罪を償いたいというよりも、まるで“救われたい”といっているかのようだ」
「―――ッ!?」
雷に撃たれたかのように身体を一瞬伸
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