第六章
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第六章
「そうしたことに何故気付かない」
「うっかり過ぎるわよ」
「けれど」
何しろ無意識のことである、これも仕方がなかった。彼にしてみればだ。
「本当にこんなことって」
「けれどな。この人はな」
「全部わかってくれてるのよ」
「全部って」
彼はそれを聞いてまた目をしばたかせた。
「わかってたって」
「御前のそうしたことをな」
「全部わかってたのよ」
また話す両親だった。
「それをな」
「もうね」
「わかってたって」
だがまだわかっていない正大だった。
「何が」
「だからな。見ろ」
「あの娘の顔を」
「顔・・・・・・」
見るとだ。ここで彼もやっと気付いたのだった。
「まさか、僕は」
「これでわかったな」
「そうね」
両親は少し呆れた声になっていた。
「御前はずっとな」
「あの娘の影を見ていたのよ」
「姉さん・・・・・・」
やっとわかった彼だった。そうしてだ。
姉のその顔を見てだ。そうしての言葉だった。
「僕、もう」
「ああ、いいな」
「そうしなさい」
「姉さんは追わない」
こう言うのだった。
「先に進むよ。もうね」
「先に、ですか」
手を合わせ終えた神名がだ。彼に顔を向けてきた。
「進まれるんですね」
「すいません、今まで気付いていませんでした」
正大はまずは神名に対して頭を下げた。
「けれどこれからは」
「気付かれたからですか」
「はい、先に進みます」
そうするというのである。
「これからは」
「一人ではなく、ですね」
今度は神名からの言葉だった。
「一人ではなく、ですね」
「はい、二人で」
彼の方からであった。言ったのだった。
「神名さんには失礼なことをしてしまいましたが」
「失礼ではないです」
神名はそれは否定したのだった。
「それは違います」
「違いますか」
「そうです。私はこう考えています」
そしてだ。神名は自分の考えを話すのであった。
「私と正大さんが御会いできたのはお姉さんのお導きだったのです」
「姉さんの」
「はい、お姉さんのです」
それによってというのである。
「それで御会いできて今もこうしてここにいるのだと思います」
「姉さんの、ですか」
「お姉さんをお慕いされてましたね」
また話す神名だった。
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