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ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
ソードアートの登竜門 その肆
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ないとはいえ、その圧倒的存在感にキバオウもビビっているのだろう。

 キバオウが憎憎しげにエギルを睨み付ける。しかしキバオウは何も言えない。ここまで整った正論に対して感情的なキバオウが反論を繰り出せるわけがない。あとは往生際の悪いキバオウが敗北宣言をするのを待つだけだった。既に空は紫色だけどいつまでも待ったるわキバオウはん、と不器用な関西弁で思ったのだが。

 しかしキバオウが敗北宣言をする前に、キバオウにとっての助け舟が出た。その声の主はディアベルだった。

「キバオウさん、君の言うことも理解はできるよ。オレだって右も左も解らないフィールドを、何度も死にそうになりながらここまで辿り着いたわけだからさ。でも、そこのエギルさんの言うとおり、今は前を見るべき時だろ? 元ベータテスターだって……いや、元テスターだからこそ、その戦力はボス攻略に必要なものなんだ。彼らを排除して、結果攻略が失敗したら何の意味もないじゃないか」

 その言葉に聴衆の多くは深く頷いたりしている。しかし俺はディアベルの言葉に納得できないものがあった。いや、正しくはディアベルの言葉がもたらす効果に納得できないものがあった。自分の考えをインディゴに小声で、システム的には囁き(ウィスパー)で話しかける。

「……ここはさ、キバオウの独善的な論理を正攻法で徹底的に潰してしまったほうが良かったんじゃないか? この会議で二度と同じような議題がでないように判例をひとつ作っとくべき場面だと思うんだ。ここでのディアベルの言葉はキバオウに起死回生のチャンスを与えることになるぜ?」
「……ディアベルのあの言葉じゃ判例は作れないの? 十分効果ありそうだけど……」
「いや、あれは議論に説得を挟む行為っていうか……あの言葉だとエギルの言葉に納得じゃなくてディアベルの言葉に説得されるっていう撤退法が生まれちゃうんだよ。んで後々『あん時はディアベルはんに顔たてるために退いたけど今一度言わせてもらうで!』とかができる」
「……うーん難しいわね。もしかしてディアベルはボス攻略が成功したあとで決着つけるつもりなのかしら?」

そこまで話すとキバオウが俺の予想通りの反応をした。敗北宣言ではなく、撤退声明。

「…………ええわ、ここはあんさんに(したご)うといたる。でもな、ボス戦が終わったらキッチリ白黒つけさしてもらうで」

 そう言ってキバオウは前列に戻っていく。やはり、というかなんというか、ウィスパーでもう一度インディゴに話しかける。

「どうだ? 俺の予想通りだな。キバオウのやつ、話を引き伸ばすことに成功しやがった」
「……そうね」
「結局はディアベルも、ベータテスターが憎いのかね。いや詰まってた言葉がつい出たって捉えるほうが自然かな……」

 しばらくの時間、俺とインディ
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