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ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
ソードアートの登竜門 その肆
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たなら、もしかすると数人程度の死人は減っていた可能性があるかもしれないが、こんな私怨渦巻く世界でおいそれと自分の情報を出したくないのが普通だ。大体、情報がないのに行動したのは死んでいった奴ら自身だ。自分で考えて行動するなら自己責任だろう。こんなことは今時小学生だって知っている。

 第一、そういったβ時の情報というガセはいくつか流布していた。誰々が元βテスターだぞ、だとかβテスターは既に団結して情報を独占しているぞ、だとか。
 そういった情報は(ことごと)く間違いだったし、かくいう俺も何人かに『βテスターですか?』と聞かれたこともある。『始まりの街でイノシシを狩りながらのろのろレベル上げしている俺が元βテスターならβの情報なんてゴミじゃねーか!』そう言ってキレたらビギナーどもがとぼとぼ帰っていったのをよく覚えている。
 やはりクラゲのように主体性がない奴らに対して一番効果的な断り方はキレることだ。長く係わると後々面倒だしさっさと険悪な雰囲気を出すに限る、……いやいや、我流世渡りの方法は置いといて。
 つまり、ガセの多い≪βテストの情報≫なんぞ信憑性がない以上何の役にも立たない。むしろ騙されて死ぬ確率のほうが多そうだ。≪アルゴの攻略本≫のようなブランドのある情報源でない限り信用は決してできない。

 ここまでの有力で数多い反論材料が揃っている。

 しかし正論を持っていても、元来(がんらい)野次馬としての星を背負ってきている俺には主張を、しかも関西弁相手に、展開しようとは思わなかった。そういう役割はまだ他のプレイヤーにして欲しかった。しかし周囲を見れば、他のプレイヤーも皆押し黙っている。アルゴの情報でここまでやってきたのは俺だけではないだろうに。始まりの街で大量に流布したβのガセ情報を知っている人間は別に俺だけではないだろうに。

 仕方ない、と思い頭の中で展開する言葉をのろのろ選んでいるうちに、張りのある豊かなバリトンが広場に響いた。

「発言、いいか」

 発言主は、チョコレート色の巨漢だった。その背丈は身長に自信のある俺すらもはるかに越えている。百九十ぐらいだろうか。チョコレート色の肌に似合った堀の深い顔立ちやスキンヘッドが中々にマッチしている。日本人ではないのは確実だろう。経験から言えば、アフリカ系のアメリカ人。

 チョコレート色の巨漢――名前をエギル――は俺の言いたかったことを全て言ってくれたうえで俺の思考が至らなかった点まで補完してくれた。

 もし野次馬でピエロな俺がここでエギルと同じ反論を繰り出していたところでキバオウは言葉に詰まることはなかっただろう。根拠のない言いがかりで俺を悪者に仕立て上げていたかもしれない。エギルだからこそあの独善的な暴論を押さえ込むことができたのだ。見た目にステータスは反映され
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