W バースデイ・アゲイン (6)
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、僕の行く道にちょっかいを出し続けた、魔女。
「貴方は取り戻した。貴方だけの『名前』を」
――「倖」。思いがけない幸い、という意味なんだとどこかで聞いた。両親にとっての僕はそういう存在だったんだ、とも。
ふり返ってみる。そこには、満足げに微笑む白い魔女。
……そういう表情を見るとほだされそうになるからやめてほしい。師は、この魔女にだけは入れ込むな、と言ったんだ。
「これで貴方は再び正しく産まれた。私はそれを祝福する」
白い魔女は多節棍の石附で地面を突いた。
とたんに僕の足元に、魔法陣が広がった。風が逆巻き、僕と魔女の髪や服を吹き上げる。
「我が銘において、貴方の再誕を認めましょう。貴方は今ここに個として生きる権利を取り戻し、自らの足で生を歩む資格を取り戻した」
胸に、満ちる。何が、と問われても答えにくい。だからこそ、それは魔法と呼ばれるんだろう。
魔女が「魔法」の終符を紡いだ。
「Happy Birthday,“谷山倖”」
――谷山倖。
今日取り戻した、新しい僕。
自ら生き死にを決める権利を取り戻して、人生を自分の意思で歩いていける、僕。
「お行きなさい。そして生きなさい。己のままに。もう貴方は父親の偶像をなぞらなくてもいい」
僕は白い魔女に背を向けた。
脅かす者のない人生の幕開け。さあ、何をしよう、どこへ行こう?
何でもいい。どこでもいい。
谷山倖として踏み出す第一歩だ。どんなものであっても、きっと誇らしいものに、価値あるものになるに決まっているのだから。
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