第二章
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第二章
そしてだ。そのうえでまた声をかけた。
「それじゃあですけれど」
「はい、それじゃあ」
「またここに来ていいですか」
本を持ちながらの言葉だった。そうしてである。
彼はその本屋に毎日来た。そして彼の顔も少しずつ明るくなった。
このことにだ。両親も言う。
「何か明るくなったな」
「気を取り戻したの?」
「そうなのか?」
「そうかもね」
正大も少し笑ってこう返すのだった。
「ひょっとしたら」
「一体何があったんだ?」
「それで」
「何でもないよ」
今はこう言うだけの彼だった。
「別にね」
「何でもないのか」
「そうなの」
「そうだよ、何でもないよ」
しかしであった。正大は確かにその表情は明るくなっていた。そうしてである。
この日もその本屋に通う。最早それは日課になっていた。
そのうえでだ。その店員と話す。話をしているうちにお互いのことを知るのだった。
「切通正大さんですか」
「はい、そうです」
まずは彼の名前からだった。
「覚えてくれますか」
「はい、それで私の名前はですね」
「何ですか?」
「田部神名といいます」
「田部さんですか」
「はい」
笑顔で彼に話すのだった。
「宜しく御願いしますね」
「はい、それでは」
まずは名前からであった。そうしてだ。
二人は付き合いを深めていく。やがて店の外でも話をするようになった。街の中で話をしていた。その話が何かというとであった。
「そうですか。お姉さんがですか」
「はい、いました」
姉のことも話すのだった。
「実はです」
「それでも今は」
「死にました」
ここでだ。辛い顔になって話す。
「残念ですが」
「そういうことがあったんですね」
「けれど今は何とかこうして」
大丈夫だというのであった。
「安心して下さい」
「わかりました。では正大さん」
「はい」
自然とだ。名前で呼び合う仲にもなっていた。
「今は大丈夫ですね」
「何とか」
とはいってもだ。やはり辛い顔になっていた。
神名はそれを見逃さなかった。しかしあえて隠して頷いて言うのであった。
「わかりました」
「今は落ち着いてます」
また言いはした。苦しい顔で。
「ですから安心して下さい」
「はい、それではですね」
「それでは?」
「今日はまだ時間がありますよね」
真面目な顔での問いだった。
「ですから」
「何処に行きますか?」
「正大さんの望まれるところで」
そこでいいというのだった。
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