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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第27話 雨宿り その1
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た。いつも陽気で気さくで遠慮のない叔母さんも、伏し目がちに言いにくそうにしている。イロナが俺を直接標的にする理由がないことは俺も分かっているし、出来のいい姉と妹に挟まれると、何かと辛いというのも分からないわけでもない。

 だがこのままイロナの事をレーナ叔母さんに任せていいという話でもない。アントニナやラリサと直接このことを話せるようになるまでには、相当時間がかかることは目に見えている。従兄とはいえ養子である俺にしか、当たることができないのだ。賢く真面目であっても、まだ九歳なのだから。

「……イロナを明日からしばらく連れ出しいいですか?」
 俺の応えに、レーナ叔母さんは本当に済まなさそうに、小さく頷いたのだった。

 翌日、朝から俺はイロナを連れて家を出た。アントニナは声を上げて、ラリサも六歳なりの不満顔で抗議したが俺は明後日には戻って来ることと、明明後日以降はちゃんと付き合ってやる事を条件に、二人を引き下がらせた。肝心のイロナも無表情だったが、特に抗議することなく黙々と旅装を整えると、俺と一緒に無人タクシーに乗り込む。その無人タクシーがハイネセン第二空港(大気圏内航空)に到着したことに、イロナは少しばかり驚いていたようだったが、何も言わずに俺の後をついてきた。数時間のフライトを終えて降り立ったのは、懐かしのテルヌーゼン市だ。

「イロナ、少しそこで待ってな」
 自転の関係上、既に夕方に近いテルヌーゼンの空港ロビーから、俺はあるところに電話する。六コール後に出てきた事務員に上司を呼ぶよう依頼するとたっぷり一〇秒後、画面に六四分けのブラウンの髪を持った少佐殿が現われた。
「俺を呼び出すとは随分と偉くなったものだな。え、『悪魔王子』」
「四日後には大尉に昇進の予定ですので、そこはご寛恕願いたいと思います。キャゼルヌ少佐殿」
「で、テルヌーゼンまで来て、俺になんの用事だ。酒の催促か?」
「近いです。ご迷惑をおかけしますが、今夜私ともう一人、先輩のお宅でお世話になっていいですか?」

「……なんだ、お前。いつ俺がオルタンスと同居しているって……ヤンか? それともワイドボーンか?」
 あいつらぁ……と額に手を当てながら苦虫を噛むキャゼルヌは、俺が肯定も否定もしなかったので、高く舌打ちする。
「まぁどちらでもいい。だがお前さんと一緒に来るのは誰だ? 暑苦しい男を二人も泊めるほど、俺の心は広くないぞ?」
「宿はちゃんと取りましたから、先輩の甘い生活の邪魔はしませんよ。私の妹です」
「未成年者略取で通報していいか?」
「家族ですから時間の無駄になると思いますが?」
「真面目に返すな。本当にお前はユーモアがない奴だな。いつまでたってもそれじゃ女に好かれないぞ?」
「……妹がいれば充分ですよ」
「いじけるな。まったく歯ごたえのな
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