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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第27話 雨宿り その1
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いんだよ?」
 悪戯っぽい表情にも少しだけ妖しいものが含まれているのは気のせいだろうか。気のせいだと思いたい。だからあえて俺は話題を転換した。
「そのフレデリカちゃんとはそれからどうなんだ? 仲良くしているか?」
「『フレデリカちゃん』? 兄ちゃん、フレデリカとそんなに仲良かったっけ?」
 俺の鞄を肩に掛けたまま、その鞄越しにアントニナは俺を流し目で睨んでくる。怖い。かなり怖い。
「……いや、グリーンヒル閣下のこともあるから」
「前回の中間テストでフレデリカ、僕の一つ上の順位だった。だから今いちばん仲が悪い」
「で、アントニナ。お前の順位は?」
「二位なんだよ!! も〜!!」

 俺の鞄ごと両腕を上げて叫ぶ姿に、到着口のあらゆる方向からアントニナへと視線が集中する。どう見ても若い軍人が、年端もいかない(といってもティーンエイジャー)少女に荷物を持たせて怒らせている……空港に司法警察風紀班がいるとは思えないが、肩身が狭いどころではない。俺は鞄をアントニナから取り戻すと、あえて大嫌いな無人タクシーへと早々に乗り込んだ。

「そういえばお父さんが言ってたけど、ヴィク兄ちゃんケリムで功績を挙げたんだって?」
 当然のように俺の隣に座ったアントニナは、顔を近づけると俺にそう問うた。肩口で切り揃えられていた金髪は一年で少し伸び、タクシー内の空調によって僅かに掛けられたコロンか何かの匂いが、俺の鼻孔を微妙に刺激する。いかん、いかん。
「あぁ……たいしたしたものじゃないけどな」
 実際そうなので、俺がアントニナと反対側で頬杖をつくと、アントニナは腕を頭の後ろで組んで身体をシートに押しつけた。
「じゃあ……しばらくはハイネセンで勤務になるの?」
「いや、ちょっと遠くに行く。フェザーンだ」
「フェザーン!! ナンデ!!」
 助手席シートから立ち上がって、盛大に無人タクシーの円い天井に頭をぶつけ、アントニナが直頭部を抱えてシートに蹲った。その動きに俺は苦笑を隠せない。本当にこれでフライングボールの選手なのか。
「任務なんだよ。帝国軍との戦場じゃないだけ、まだマシってもんだ」
 そういうと、俺はいつものようにアントニナの頭の上に左手を置いて掻きむしってやる。

 ハイネセンへの旅中、人事部公報として端末に届いた同窓名簿を見た。七八四年卒業(七八〇年生)四五三六名のうち、一四名の名前が赤字に変わっていた。病死した一名をのぞいて半数以上が辺境巡視艦隊に配備されて帝国軍との戦闘での名誉の戦死、残りの半数が地上戦による戦死と事故死で分けられている。中尉になってこれからという時に無慈悲な砲火で散華した同期達に、俺は船室で一人冥福を祈ることしかできなかった。それに比べて俺はなんと恵まれていることか。戦場とはいっても一方的な海賊との戦闘。それも一度き
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