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皮肉を愛す女
皮肉を言う女
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杞憂に終わる。私が無言でおしゃぶりを彼女に渡すと、ユニ様は全てを悟ったような瞳で、私を母の下へ連れていってくださいとだけ言った。その瞳には確かに大空の炎が宿っているように見えて、確かに、アリアさんの面影があったのだ。

 その夜アリアさんは亡くなった。ユニ様は、彼女の死に間に合うことができたのだ。

 母親が亡くなってすぐだというのに、翌日の朝、ユニ様は笑っていた。その笑顔があまりにも完璧すぎて、私には痛々しくさえ思えた。袖が濡れているのも分かった。
 それに気付いたすぐ後だった。負傷した太猿とγが戻って来て、恐らく一番アリアさんの近くに居たのではないかというγは、その笑顔が不愉快だとユニ様をたたき出そうとした。が、最後には彼女に片膝をつき、忠誠を誓っていた。それだけの魅力が、ユニ様にはあった。
 階段を下りるγがどんな表情をしていたのかは分からない。でもきっと、私と同じような顔をしていたのだろう。


 私も、彼と同じ気持ちだった。










*










「だめです、シーナ。危険すぎます」
「でも、ユニ。その役は絶対に必要だよ。そして、私が一番の適役でしょう」
「でも、シーナ、貴女が死んだら元も子もない」
「死なない確率は、私が一番高いの」

 言い合って、三日が経っていた。その間、ずっと水掛け論の押し問答。どちらも譲らなかった。

 一番年が近く、そして同じ女だったからなのか、私とユニは急激に仲が良くなり、主従の関係として、そして親しい友達として、近しい存在になっていった。呼び方もすぐにユニ様からユニへと変化し、γのあまり姫に馴れ馴れしくするなという声も、右から左へ、いつだって聞き流していた。
 そして、そうなってすぐだった。ジェッソファミリーの脅威は大きくなっていくばかりで、一つの問題が発生した。私たちは、相手のファミリーのことを何も知らなかったのだ。ビャクランの名前以外は。

「だからね、絶対に必要なの、スパイは」
「その意見も分からなくはないが、姫の気持ちも考えろ」
「考えてる。ユニは被害を出したくないの。だったら尚更、相手の情報が必要だと思わない? 事前に相手が何をするのか知っていたら、対応策も練れるというものでしょ?」
「姫は、お前の身を案じているんだよ」
「私だって、ファミリーの未来を案じているの。堂々巡りでしかないの、私たちの言い合いは」
「シーナ、焦ってるな? とりあえず名前は知ってるんだ、どうにでもなるだろう。ゆっくり待て」
「…………ええそうね、γ。貴方はユニのことは名前ぐらいしかしらないのに、全てを知っているつもりでいるのだものね。きっと、貴方は名前だけで他人の本質を見抜くことができるでしょう?」
「シーナ!!」

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