幽鬼の支配者編
EP.26 ミラジェーン
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「いいから……お願い」
「……分かった。ワタル、姉ちゃんを頼む」
「あ、ああ……」
珍しく、有無を言わせない口調の姉に何か感じるものがあったのか、素直に離れるエルフマン。そんな彼とは対照的に、ワタルは当惑していた。
「ねえ、ワタル……いつだって、私は貴方に助けられてばかりだったわね」
「どうした、いきなり……そんなこと気にしなくても――――」
至近距離、ミラジェーンの蒼い瞳に決意の色が見え、彼女が言う事に思い当たることが無かったワタルはさらに困惑した。
瞳を僅かに潤ませ、頬を紅潮させた彼女はそんな彼に構わず……
「こんな事、いきなり言われても困るだろうけど……私、ね……ずっと、貴方の事が好きだったの」
胸に秘めた想いを打ち明けた。
「……え?」
「ううん、だったじゃないわね。今だってそうよ……でも、貴方は――――」
「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待て! ……一体、いつから……?」
ミラジェーンからの告白。ワタルには、これ以上は無いと断言できるほど、完全な不意打ちだった。
鈍器で頭を殴られたような衝撃に目を見開くと、彼は今までに無い程に狼狽しながらも尋ねる。
「そうね……5年以上前から、かな」
「5ね……!?」
話を遮られた事に嫌な顔一つせず、赤い顔で頷いたミラジェーンの顔に冗談の類の色は見られず、ワタルはさらに驚愕したのだが……ある事に気付き、頭を抱えた。
「じゃあ……俺は、何てことを……最低じゃねぇか」
ミラジェーンの言葉が真実だとすると……自分は、自分を好いていた少女に別の少女の事を相談していた、という事になる。
ワタルには、それが想像すらしたくないような残酷な事に思えた。
知らなかったなど、理由にならない。良かれと思ってやった事が、別の誰かを傷つけていた……無意識の悪意を自分が放っていた事に、彼は吐き気すら感じた。
「その様子だと、やっぱり気付いてなかったみたいね」
「ミラ……俺、なんて言ったらいいか……」
謝る事さえも、彼女への侮辱や冒涜に思えるほどの強烈な自己嫌悪が、彼を苦しめる。
そんな彼の絞り出すような言葉に、彼女は首を振った。
「いいの。寧ろ気付いていなくてホッとしたわ。……貴方の目にはエルザしか映っていなかった――――それが改めて分かったから」
「ッ……なら、どうして……」
「こんな事を言ったのか?」
「……ああ」
さらに自分の想いも、ミラジェーンにはしっかりとばれていたことに唇を噛む。
ワタルの問いに頷くと、彼女は再び彼の胸板に額を押し付けた。
「ミラ……?」
「……本当は、伝えるつもりなんてなかったの。このまま、時間が貴方への想いを忘れさせてくれる……そう
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