暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
ソードアートの登竜門 その参
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いようだ。いやきっと、気づいてはいるだろうがそういう男性からの視線にはもう慣れっこなのだろう。無視を決め込んでいた。

 彼女の容姿は目を引いた。艶のある黒に近い濃紺色のロングストレート。輪郭に自信があるのか横髪を耳の後ろで流しており、やはりというか輪郭は綺麗なラインで構築されている。目の色も(きらめ)くようなコバルトブルーで、その全身の青色は、涼しげという形容と冷たげという形容の中間に位置する顔の造りとマッチしていた。
 背は女性にしては高く、凛としている。成人のようで未成年のような曖昧な印象を受けるが、『大人びた高校生』が一番しっくりくるだろう。
 服装は青色のコートで思えば片手剣士(ソードマン)であるキリトとよく似た装備だった。キリトと同様に片手剣士御用達のアニールブレードを持っている。だがキリトとは決定的に違う点がある。キリトは盾なしの片手剣という(俺ほどではないが)独特なビルドだったが、彼女はセオリー通り盾を持っている。しかもこの最序盤には珍しいと思われるカイトシールドだ。

 これは相当の実力者ということを示唆しているのではなかろうか。というのも俺は前線で戦う片手剣士の何人かとは会ったことがあるが、あそこまで立派な盾は今まで見たことがない。つまり俺が遭遇した盾持ちの片手剣士の中では装備的には最強、と思っていいだろう。

 最初こそは女性プレイヤーということに注目したが、そのカイトシールドを見て以降はカイトシールドのほうに注目が向いた。

 店内に入って数秒間、青色の彼女は立ち尽くしていたが「いらっしゃいませ」の言葉もない料理店はどうも初めてだったらしく、苦々しい顔をしながら空いているテーブルへ座っていった。

 店内には俺と青色の彼女とお助けNPC(この店の料理を食べる正攻法を教えてくれる)以外には客は居ない。というか普段はNPCを除けば一人もいない。常連も両手で数えるほどしかいないこの店には商売繁盛という観念すらないのだ。この店が潰れないのはただただNPCの店だからに過ぎない。

 うららかな朝日を浴びながら、うつらうつらと『あの盾の防御力とかダメージカット率とか凄そうだなぁ』などと呑気に考えていると、唐突に眠気が消えた。何故だか自分でもわからなかったが次の瞬間、店主の言葉と供に、ただの反射的な正常反応だったということを理解した。

「あいよ……≪コノスパゲッティ≫……な」

―――……あっ!!やばい!!

 無論、この店に≪コノスパゲッティ≫という料理はない。恐らくあの青色の彼女がメニューを指差して「このスパゲッティで」とか言ったに違いない。そして俺がその言葉を聞いて、いつもの癖で反射的に臨戦態勢に入ったのだ。

 この時俺は豪快に椅子を転ばしながら立ち上がり、必死の形相で「危険だ!! 逃げろっ!
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