”狩人”フリアグネ編
終章 「断罪」
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する筈――――っ!?」
あの激動の中、奇跡的に原型を留めていた少年の制服を破り、存在の力を補給しようと試みる。
だが、少年の身体に起こっている奇怪な状況に思わず息を飲んでしまった。
「これ―――、どうなってるの?」
それは、人間の身体と言えるのだろうか。否、剣の身体と形容し得るものと言えた。
ギチギチと音を立てて、数多の剣が身体を突き破っては消え、そしてまた生える。
なんだ、幻じゃなかったのか。少年は他人事のように、自分の身体を見るまでもなくそう思った。
無数の裂傷の幾分かはこの剣が付けた物であろう。存在の力を補給しようと少女が少年の身体に触れようとすれば、異常に切れるその剣に阻まれる。
「ははっ―――、体は――剣で、出来て――いる、――――って事だな」
身体には一瞥もせず、天を見上げながら少年は笑い混じりに言う。
いつしか封絶も解かれ、天上には満天の銀鏡が煌めいていた。
「ふざけてる場合じゃないわよ。これじゃ、傷口に触れる事も出来ない――っ」
少女は唇を噛みしめる。傷口を合わせて繋げる、治癒らしい治癒の術がない少女には、少年に直接触れなければ治す事も出来ない。
「大――、丈夫。どうせ、ほとんど――、魔力切れ――、だから。剣は、すぐ――消え―――っ!」
もはや流れる血も残っていないのか、少年は乾いた咳をする。
通常、回路をオフにすれば剣は消える。しかし、回路が暴走してしまっている現在、少年は自力で回路を閉じる事が出来ない。
その為、身体に残っている魔力が完全に無くなるまでは剣の生成を止める事が出来ない状況だった。
とはいえ連戦をした上に聖剣の無理な投影。少年の身体に残った魔力は微かなものである為、生成はすぐに終わるだろう。少年はボンヤリとそう考えていた。
「何故、そんなになるまで僕を救けたんだ衛宮士郎 」
ゆっくりと、少年に近付きながらフリアグネは言う。少年の決死の一閃、そして火除けの指輪アズュールの結界が彼を完全に護り切った故に、彼は傷一つ負ってはいなかった。
本来、物理的打撃に等しいアラストールの拳はアズュールでは防ぐ事は出来なかったであろう。しかし、士郎の勝利すべき黄金の剣による一閃で破壊され、炎の塊と化した拳の残骸を、アズュールが防いだことで彼の今の生がある。
「俺が、目指す――のは、全てを――、救う、正義の味方――――だ、から――な」
天を見上げる少年の瞳が映すものはその先の月ではなく、何処か遠い過去のようだった。
この世の全ての悪を担った男から受け継いだ、遠いユメ。
それは呪いではなく、願い。生涯、その身を暗き深淵に置いた男が、少年へと受け継いだ光。
そんな遠い月夜と、今宵はとても似ていた。
「もう黙ってなさい、そんなことを言ってられるほどアンタの身体は――
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