”狩人”フリアグネ編
終章 「断罪」
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据え少年は呪文を唱える。
少年が唯一許された魔術、そこから零れ落ちたる投影。その中でも特に強力な武器が無ければ、アラストールの拳を防ぐ事は出来ない。
「ガッ―――――」
強烈な違和感。身体に慣れ親しんだ夫婦剣以外の宝具を投影しようとしているからか、身体の中を異物がズタズタに引き裂いているかのような感覚。
「ハ――――ァッ!?」
全身の痛みを遥かに上回る激痛。気付けば少年は口から血を吐いている。だが、魔術行使を止めない。
「グ――――、ゥア――」
――――止めろ。
身体が警告を鳴らす。内蔵は既にボロボロに引き裂かれている。
――――ヤメロ。
視界が霞む。立っているか、それとも倒れているのか、少年は既に知覚出来ていない。
――――死にたいのか。
依然として鳴り響く警告。激痛が走っている筈が知らぬ間に痛覚すら麻痺している。
…………うるさい、少し黙っていろ。
少年は警告に抗い、強引に魔術を行使する。
投影、いや少年の魔術は自身との戦いだ。
イメージするモノは常に最強の自分。脆弱な意思を、弱い自分を蹴り飛ばし、ひたすら一つのイメージを紡ぎ出す。
「アアアァァァ――――!」
馴染まない身体に魔力を通す。詰まった管の如く回路に魔力が通りづらくとも、大量の魔力を無理やり流し込む。
回転数を上げる都度に魔術回路は暴走している。もはや少年の意思で停止出来ない域に到達しているが、止まっているよりはマシだと、少年は躊躇いなく魔力を流す。
全身からは、漏電しているかの如く漏れ出した魔力が音を立てていた。
設計図は製作済み、投影の工程も全て完了。だというのに、少年の幻想は半分実体化をしたところで膠着している。
――――ダメなのか!?
遠のく意識を歯を食いしばって繋ぎ止める。アラストールの拳は至近にまで迫っていた。
ここで投影出来なければ、フリアグネが死ぬ。あの拳を止める為には、今、少年が投影している剣が必要なのだ。
「頼む――――」
血を吐きながら声を絞り出す。剣を投影している筈が、自身が剣になったかのような感覚が少年を襲う。
残った魔力のありったけを回路に注ぎ込む。骨折、裂傷した傷口から剣が飛び出している幻覚を少年は覚える。
「頼む―――っ!」
霞んでいた視界は更に狭くなる。少年は既に、左眼の光を失っていた。
呼吸もいつの間にか止まっている。不足している酸素を補給しようにも、止めどなく排出される血液が邪魔をしていた。
そんな事など無視し、少年は幻想を、最強のイメージを紡ぎ出す。
「――――来てくれ、セイバァァァアアア!!!!」
祈り、願い、あらゆる感情が少年に、紡ぎし剣の持ち主の名を叫ばせる。
――――空間が震える。
少年がその名を叫ぶと同時に、漏れ出していた魔
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