”狩人”フリアグネ編
終章 「断罪」
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て士郎は起き上がる。全身が動くなと痛みという形で警告をするが、今の彼はそんな全身の信号を感じる事も出来なかった。
たった数日、ほとんど出会ったばかりの少女だった。だが、そんな事は些細な事だと思わせられる程の強烈な少女の存在感。いつの間にか、まるで長い間、共に戦ってきた戦友の様な存在となっていた。
そのあまりに大きな存在を喪失した事が、大きな衝撃となって少年を襲う。
足取りもおぼつかないまま、フリアグネに向かって少年は歩き出す。
「賭けの相手がいなくなったら、勝負にならないじゃないか……」
居なくなった少女に、もはや届かない文句を言う。そうでも言っていないと、少年は膝を折ってしまうだろう。
「生きて……いたのか。衛宮士郎くん」
少年に気付いたフリアグネは振り返る。その腕には都喰らいの要たるハンドベルはなく、そして以前のような覇気もない。
「あぁ、そうらしいな」
――勝ったんだな、シャナ。
都喰らいの阻止、その絶対的な目標は達成出来たことになる。それはフリアグネの表情を見れば明白であった。
唯一、少年の誤算であったのは彼自身が生き残り、少女が犠牲になった事である。
ミステスの俺ならともかく、お前が死んだら駄目だろ……。
少年はそんな感情を抱くが、表面には決して出さなかった。なぜなら、未だ戦闘は継続しているのだから。
「僕の負けだよ。そして君たちの勝ちだ。お互いに犠牲は大きかったけどね」
自嘲気味に笑いながらフリアグネは言う。まるで憑物が落ちたかの様に穏やかな語り口だった。
「フリアグネ。その様子だと逃げるつもりはないみたいだな。あの拳銃を撃ち込んだんだから、被害範囲から逃げればシャナを討ち取れるだろ」
――なのに何故、逃げない。
少年は問う。
「そんな醜い真似はしないよ。こんな僕でも王の端くれなんだ。それにマリアンヌも待っているしね」
その言葉の意味はわざわざ問いただすまでもない。これから爆発するシャナと一緒に奴も死ぬ気なのだ。
「シャナの顔を立てかつ、あの人形の元にってか」
「その通りさ。ここで僕だけがおめおめと逃げたら、君たち、そして僕の為に命を投げ出したマリアンヌへのこの上ない侮辱だ――」
フリアグネがそう言い終えるのとほぼ同時に、空間が灼け紅蓮に染まる。
「―――ッ!?」
フリアグネが、そして士郎が、二人とも言葉を失ってしまう。
今二人がいる廃ビル、そこに並び立つ程巨大な存在がそこにあった。
反応炉が如く巨大な熱源、フレイムヘイズとはいえ人間の延長線。その人智では到底制御など不可能だと圧倒される存在。世界の意思、神の怒り、考えられる全ての方法で形容し難い、それは、誰が言ったか天罰神と形容するしかない存在といえた。
「それが――、君本来の姿か。"天壌の劫火"アラストール
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