暁 〜小説投稿サイト〜
炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師
”狩人”フリアグネ編
終章 「断罪」
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い。
 少女はフリアグネの後ろ姿を睨み付けながら、少年の真意に気付いていた。
――この攻撃の真意はフリアグネの注意を引くことにあった。
 遺された短剣を握りしめる。そして少年の指示の理由を考える。
――アイツはわざと短剣を外したんだ。最後の武器を私に託すために。
 正面からの攻撃が故に、迎撃を恐れたからではない。もしそうならば、短剣を投擲したこと自体が間違っている。単純に奴を倒すだけなら、飛び込んで斬り捨てればいい。武器封じも護衛も失った今のフリアグネを相手に少年の剣技ならそれが出来た筈なのだから。
 では何故、短剣を外したのか? 単純に討滅するだけでは駄目だというのか。
 その答えは、あの指示が、そしてフリアグネの立ち振る舞いが証明していた。
 残骸すら失われ、既に用済みであるハンドベルをいまだに鳴らすのは何故か。倒す機会すら捨ててまで封絶を張れといった理由は何故か。自らの命を賭してまで、不意を突かせようとした理由は何か。
「マリアンヌ……、すぐに君を呼び戻すからね」
 幾度目かも分からないハンドベルの音を鳴らしながら、フリアグネは呟く。
――今しかないっ!
 マリアンヌを喪ったことがそうさせたのか、この時のフリアグネは完全に無防備といえた。
 無論、ブラフの無防備はいくつも見せてはいたが、それはマネキンの掩護の為のものであり熟練した戦闘経験が見せる高度な戦闘技能といえる。
 だが、少女の前で見せたこの隙は、この戦闘でフリアグネの見せる初めての完全な無防備状態だった。
「封――――」
 自在式を呟きながら少女を飛び出す。当然、足裏の爆発も併用するが、普段のように推進の為が故の加減などはしない。それこそ自分の足を吹き飛ばす勢いでの加速がなければ、フリアグネの背後を確実に取ることは出来ないだろう。
――その理由はハンドベルを潰せってことでしょっ!
「な、に――っ!?」
 背後の異常にフリアグネが振り向こうとする。が、もう遅い。
「――絶っ!!」
 斬撃と同時に封絶を展開。フリアグネを相手に二度は通用しないであろう、奇襲と同時の封絶。
 その全てが理想的な形で行えた事を剣閃の最中、少女は確信する。

 鶴の翼が如く純白の短剣から繰り出される一閃が、フリアグネの手ごとハンドベルを叩き割った。



  ◇



「はぁ――、はぁ――」
 少女は攻撃の勢いのまま地面に倒れ込んでしまう。
 ハンドベルを叩き割った後、短剣は硝子細工で出来ていたかのように砕け散ってしまった。しかし、破損した剣がただ砕けちったのだとは少女には思えなかった。
 己が役目を終えたが故に、その様は潔く消えた。どうしても、その様に思えてしまうのだ。
 それには不思議と喪失感はなく、どこか心地の良いものとも思えた。
――もう、
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