第9話〜ケインの受難〜
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激動の時代において、主体的に活動できる人材を生み出そうとしているのかな?」
「もう!これだと、ほとんど正解言われちゃったようなもんだわ」
「すみません・・・『未来を変えろよ。お前には、その力があるんだ』
それが、俺が聞いた、父の最後の言葉ですから。
意味を考え続けて、この時代の事なんだってようやく分かったんです」
「・・・そう。悪いこと言わせちゃったわね」
「平気です。話したのは、俺の意思ですよ」
いつ起きていたのか、ケインの考察に不満の声を上げるサラ教官だったが、思わぬことをケインから言われる。いたたまれなくなった教官は、ケインの頭を優しく撫でてから彼の耳元で一言だけ囁き、また寝始めてしまった。重くなった空気の中、少しの間考え込むそぶりをしていたリィンは、自分の身分について語り始める。みんなに不義理をしていたという思いがあったらしい。話題を変えようとしたのは、ケインの父の話にこれ以上触れないための彼なりの気遣いだろう。
「マキアスの問いにははぐらかす形で答えたけど、俺の身分は一応、貴族になる」
話によれば、帝国北部にある山岳地、ユミル。その地を治めるシュバルツァー男爵家が、リィンの実家であるそうだ。確か男爵位の貴族ながらも、昔から皇帝家との親交があることで有名だと記憶している。彼まで貴族だという真実に、驚きの声を漏らすエリオット。
そんなタマじゃないさと苦笑するリィンは、自身が養子であり、貴族の血は引いていない事を口にした。自分の道を見つけると言った理由は、家庭内の事情からか。そんな風に考えたところで、ケインは余計な詮索だと思考をかき消す。
「貴方も・・・色々事情があるみたいね?」
「はは、そんな大層な話じゃないけど・・・それでも、みんなには黙っていられなくなったんだ。これからも同じ時を過ごす、仲間として。何より、Z組のメンバーとして」
「・・・真面目だな、この上なく」
「あはは、ケインがそれを言っちゃうの?」
リィンの話を聞きながらも、ケインはそれとは別に、気がかりな事があった。
自然公園のヌシであったらしいヒヒ型の巨大魔獣は、どうしてあんなタイミングで現れたのか。その後に駆けつけた領邦軍がグルであるのはほぼ間違いないが、彼らの手腕によるものではないだろう。おそらく彼らと協力関係にある何らかの組織の仕業だ。それが一体何者であるのか。そこまで考えたところでケインのアークスから着信音が鳴り、開いて応答する。
『はい。こちらはトールズ士官学院1年Z組、ケイン・ロウハート』
『ふふ、ちゃんと繋がったみたいですね。良かった』
『って、クレア大尉?いきなり通信なんかされてどうしたんです?』
別れ際にアークスの連絡用ナンバーをクレアに訊かれていたケインは、数時間
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