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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第23話 初陣 その3
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「まず司令部の二人が情報を漏らしたかどうかが、状況証拠である点です。憲兵もそれでは二人を拘束することに躊躇するでしょう。司令部の二人が逃走する可能性を考えたが故に閣下が当艦隊を使って宙域封鎖を命じたのはわかります。ですが……」

 イジェクオンの宙域を封鎖するとなれば、それは同盟の大動脈をぶった切ることになる。経済的損失は軍の保障とかいう言葉が通じるレベルではない。星区司令部に対する叛乱というレベルではなく、第七一警備部隊は同盟の公敵として討伐の対象になるだろう。これがまず一次的に正当性を主張できない一点。
 第二に司令部の二人のいずれかであるにしろ彼らが海賊に情報を漏らした理由。脅迫・収賄などであれば、憲兵は容易に証拠を掴んでいる。なにしろケリムはバーラトの隣の星区。ド辺境ならともかく、憲兵の練度・規律は充分維持されているだろう。それでも掴めないということは、そういう事実はないと判断できる。
 第三に理由がいずれにしろ、ケリムという重要星区の最上クラスの軍人が海賊とつながっていたという事実自体が公表するには危険であること。余波はケリムにとどまることはない。大なり小なり辺境区でも同じ事があるだろう。軍部の社会に対する威信失墜を公表することになり、それは任命責任者である統合作戦本部も望んではいない。下手したら軍上層部だけでなく政権そのものが吹っ飛ぶ。

「以上のことから、もう我々が直接行動するということは出来ないレベルであると、小官は考えます」
「……では、このまま黙って間抜けを演じろということか、ボロディン中尉」
「いいえ、やるべき事は多くあります。間抜けを演じるのも一つですが、『ブラックバート』の背景をもっと深く捜査すべきです。憲兵を頼ることなく、出来る限りの情報を収集すべきです。そうすることで……カーチェント中佐の無罪が立証されます」
「俺の無罪だと!!」
 リンチには逆らえないがさすがに新米の俺には容赦しないらしい。それはそうだろう。彼自身が海賊とつながっているとは(間抜けすぎて)とても思えない。だが司令部の二人が情報を漏らしたのでないとすれば、必然的に情報が漏れたのは第七一警備艦隊から、となりその情報管理を担当するのはカーチェントだからだ。彼自身の罪ではないにしても、彼の管理が甘かったという事になるのだ。俺の隣で怒りの視線を向けるカーチェントを、俺は丁重に無視したが、代わりにエジリが咳払いの後俺を問いただした。

「……憲兵に頼ってはならない理由は、一体何故だね? 彼らの権限を持って司令部に禁足を命じることもできるだろう。無言の圧迫にもなる」
「エジリ大佐。それは『司令部の二人』が関与していた場合はそれが成り立ちますが、こと民間人……たぶん州議員クラスの人間に対しては逆の効果を持つことになります」
 同盟の憲兵はあくまで
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