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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第23話 初陣 その3
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いる。咳が収まっても助けようともしない。

 ようやく二度ばかり深呼吸して俺が腰を上げると、ドールトンは一度部屋を出てから、紙タオルを束で持ってきて机の上だけ拭く。つまり床は俺が拭けということかよと口には出さず、黙々と俺は床を拭く。束の半分を消費してなんとか原状復旧が終わると、改めて俺は准尉に協力を求めると、了解しましたと含み笑いを浮かべつつ、俺の差し出した手を握ろうとして……
「せめて消毒ぐらいはして欲しいのですが」
 と、この女(アマ)は明確にそれを拒絶した。

 とにかく手打ちを終えた俺とドールトンは、先に手を消毒した後で実質的な話に移った。

 まずは俺がリンチから借り受ける事になる二〇隻の巡航艦で、どこまで星系内の次元航跡を解析できるかと言うこと。次元航跡とはぶっちゃけ水面上の航跡と同じようなモノだから時間が経てば消えてなくなってしまう。それでも数日、大型艦なら一週間くらいはなんとか観測できる。第七一警備艦隊の星区内侵入でかなりかき乱されているだろうから、結構な処理時間が必要になるが、これで数日来の海賊艦の挙動がわかるはずだ。だがドールトンの言ったとおり星区全体の観測にはかなりの数の艦艇を必要とする。そこでドールトンの協力が必要となる。

 D星区は無人星系であることは誰もが承知しているし、有用な鉱石も産出せず、居住に有望な惑星も存在しない。かなり大きな有人星系であるネプティスの側にあっても、近隣に有人星系が少ないことから滅多なことでは輸送船はこの星系を通過しない。ただしゼロではない。かなりの遠回りにはなるが、幾つかの有人星系へ向かえる航路がある。それこそ海賊の裏を掻くようにあえてこの星系を抜けようとする逞しい(無謀とも言う)商人もいて、意外とその試みは成功している。

「海賊が自分の根拠地星系で襲撃を行うとは考えにくい、そういうことですね?」
「襲撃されれば、当然軍なり警察なりの捜査が行われるからね。その時根拠地が発見されれば、海賊側としては大損だから」
 それを見越して、リンチと俺はこの星系に根拠地があるのではないかと推測していた。その読みは当ったわけだから、リンチも無能ではない。先に偵察艦を出して航跡調査をさせなかったのも、海賊側の油断を誘うためだったのだが、それは今裏目に出ている。巡航艦二〇隻では明らかに手不足だが……

「近隣の星系からこの星系に跳躍してくる航跡を辿る。その最短コースをリストアップする。現在進行中の小惑星帯掃討作戦とのデータと重ね合わせ、不審な航跡があればそれを残す。複数艦艇が跳躍可能な宙点をリストに出す為に、小官の知識を使うというわけですね」
「二〇隻では出来ることが限られているからね」
 戦艦も含め一〇隻以上の艦艇を運用する海賊だ。その運航には細心の注意を払うだろう。しかも製造管理の
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