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ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
ソードアートの登竜門 その弐
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いて欲しかった。確認したかった。
 暗い洞窟の中に足音だけがしばらく響いた。沈黙を破ったのはやはりキリトだった。

「……攻略は遠のく。もっと言えば、攻略される日は来なくなるかも」
イグザクトリー(そのとおり)。絶望は病のように感染しやがる。それに引き篭もりの中には≪大衆が動かなければ動かない≫という消極的なやつも多い」
「そこまで言うんだから…スバル。あんたも当然今日の攻略会議には顔出すんだよな?」
「……いやぁ俺も戦力外だろう。こんな装備じゃあなぁ」

 そう言って俺は苦笑しながら愛武器ジャマダハルを見せる。とても美しいフォルムだと思うが、キリトはどうやら機能美のほうがお好きらしい。

「うーん……なんでスバルは、……言っちゃあ悪いがそんなネタ武器を使ってるんだ? 今回みたいなことがまた起きたら致命的じゃないか」
「言ったろ? ピエロが抜けないんだ。俺は根っからのズブズブの中毒者。命を賭けるぐらいどうってことないのさ」

 肩を竦ませてそう言う。しかしキリトの廃人度が足りないらしく、呆れた顔をするだけで共感してくれなかった。

「俺も色々MMOしてきたけど、お前以上は一人もいなかったよ」
「サンキュー。この世界では最高の褒め言葉だよ」

 そう返すとキリトの顔が強張った。何か怒らせるようなことをいっただろうかと一瞬不思議に思ったが続いてきた言葉はそのようなものではなかった。

「おっと……モンスターがいる。前方二十五メートル先ぐらいに一体だな……どうする?」

 キリトが睨んでいる方向にはきっとモンスターがいるのだろう。≪索敵スキル≫を取ってないので二十五メートル先に確認できるものは闇だけだ。

 キリトの『どうする?』はきっとキリトが戦うか俺が戦うかを聞いているのだろう。キリトは兎も角、俺はパーティープレイに向かないビルドだ。二人で戦ってもグダグダに戦線が崩壊するだけだろう。ならばどちらか片方が戦ったほうが良い。そうと決まればここはキリトに俺のビルドの強みを見せるべき場面だろう。

「俺がやるよ。まぁ見ときなってジャマダハルの強み、魅せてやるぜ」
「ほほう……じゃあ魅せてみなよ」

 キリトのにやりとした笑みを見てしまった俺は少しムキになってしまい、キリトの目の前で≪隠蔽スキル≫を発動する。するとキリトの感嘆の声が聞こえた。

「おぉ…スバル、あんたの隠蔽の熟練度、相当高いな。索敵持ちの俺でも≪看破≫できないぞ」

 そりゃそうだ。俺のビルドは隠蔽ありきのビルドなので普通に戦闘するだけでも隠蔽の熟練度は恐ろしく高くなる。現在、俺の視界下部に存在するハイド・レートは暗闇の補正もあり八十パーセントある。たとえ数十秒の間俺のいる場所を見続けてもキリトには≪看破≫はできないし、軽く歩いてもハ
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