絆固めて想いを胸に
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と武器には限りがある。無駄を無くし、効率的に欲しいモノを得る為にはどうすればいいかを常に考えている。
雛里は徐州で華琳に話していた。
徐晃隊と同じモノを作るなら、春蘭か秋蘭を副将に据えなければならない、と。
曹操軍で狂信の頂点になり得るのはこの二人、と言っていたわけだ。軍内に於いて誰よりも効率と協調性を重視する彼女は、ある意味で黒麒麟と相似でありながら、今は居ない副長とも似ているのだろう。
楽しげな秋蘭の笑みに寒気が少し来るも、稟は息を付いて落ち着かせた。
今回、全てを操るのは、華琳では無く稟一人なのだ。
徐晃隊を扱えなかった時のような失態はもうしない。人の生き死にに左右はされない。戦でだけはより冷たく、より冷酷に……と。
「顔良はお二人に任せます。私は真桜の開発した一段櫓で戦場を俯瞰し、敵軍師の思惑を読み切る事に全力を注ぎましょう」
「了解なの。でも秋蘭様、無理はしないで欲しいなって……」
うるうると眉を寄せて、沙和は秋蘭を真っ直ぐに見据えた。
優しい沙和からすれば、武人の心は分からない。ただ、近しい人の身を案じるのは人として当然の事。だから声を掛けた、
ふっと一息。秋蘭の表情が緩む。暖かく気遣ってくれる部下を持てて、自分は幸せだと。
「ありがとう。なに、心配はいらんさ。私はあまり突っ込んで切り拓くのは得意では無いのでな。凪も沙和も無理はするなよ。我らが命を賭けるのはまだ此処じゃない」
兵には悪いが、とは言わない。それを言わないのが、彼女達の仕事でもある。
静かに、凪は目を瞑って深呼吸を一つ。後に気合の入った眼を秋蘭に向けて頷いた。
兵達の命を想う優しい彼女達だからこそ、兵が想いを宿せるような調練が出来て、軍が強くなってきているのだろう……そう考えて、秋蘭は嬉しくなった。
「季衣もこれを機に、私の指揮の仕方を学んでくれ」
二つに括られた桃色の髪を撫でる秋蘭は母親のようにも見える。心地よさそうに目を細めながら、季衣はコクコクと頷いた。
重苦しい空気は払拭され、穏やかな雰囲気が滲み出始める……その前に、また、稟がコホンと咳払いを一つ。しかし口元は少しだけ緩んでいた。
「では、布陣の説明に入ります」
机に広げられた戦場の見取り図に、皆は食い入るように見入って説明を頭に叩き込んで行く。
彼女達の力が試される戦は、もうすぐそこまで迫っていた。
回顧録 〜イノリシネガイハ〜
目が覚めた時は蒼天だった。
“あの時”と同じく、突き抜けるような青空が広がっていた。
雲は一つとして無く、日差しが優しく暖かく包み込んでくれる。
だから、誰かの悪
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