絆固めて想いを胸に
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、な?」
「ん? ああ、外は誰もいない。警備の二人は入る前に下がらせたからな。霞が笑ってる間に近付いてくる足音も気配も無かったぞ?」
「なっ! それを早く言いなさいよ!」
途端にいつもの口調に戻った詠が噛みつく。
性質の悪いからかいはしない二人である為に、素で忘れていたのだ。だから睨みつけるだけに留める。
「ふふっ、可愛かったよ、詠ちゃん」
微笑みを携えた月からの純真無垢な一言。途端に、詠の顔はまた真っ赤に染まる。
あわあわと口を動かすも、言葉を紡ごうとしても出て来ない。雛里の服を着ているからか、それが自然に見えてしまい、またもや霞が噴き出した。
直ぐにジトリと睨んだ詠は、
「こんの……いい加減にしなさいっ!」
「……っいったぁ!」
霞の足を思いっ切り踏ん付けた。片足を持って跳ねる霞に、秋斗も笑いそうになるがまた詠に睨まれてどうにか抑えた。
どうしようもなく緩い空気の天幕での喧騒が再び落ち着いた所で、本分を間違えてはいけないと話し始めたのは詠であった。
「とりあえずよ? 行くかどうかの判断は風と稟の二人から任されてたけど……いい……かな?」
弱々しく、尻すぼみになっていく声。不安が一杯に溢れた詠の瞳は気の強い彼女にしては珍しい。
神速の張遼率いる遊撃隊五千。無論、これまでそれ以上の部隊をも一人で率いてきたのだから、軍師が必要かと問われれば否と答えられる。
それでも、正式に曹操軍に所属する軍師二人が、侍女として働いている詠の身を戦場に押し上げる事を求めた。その意味はなんであるか、その理由は……話されていない。
官渡に到着後、遊撃隊を率いて出て行く霞には事前に伝えられていなかったのだ。各部隊の連携が最重要とされる戦で。
袁家や他諸侯の耳を気にしてはあるだろう。しかし、何処か違う理由も感じられた。
霞が考えても、答えは出ない。ただ……彼女の心には、湧き上がる嬉しさと安心感があった。ジクジクと胸にあったはずの傷が癒された気がした。
ねねが向けた敵意は詠にも月にも伝えている。湧き立つ悲哀から涙零れそうになりながら話しておいた。
秋斗と出立前に酒を酌み交わし、澱みを流した……つもりになっていた。
それだけでは足りない。彼女が心の底から渇望していたのは、嘗て共に戦った友達が隣に居てくれる事であったのだから。
ふっと微笑んだ霞は、そっと詠の頬に手を寄せた。
「なぁんも問題あらへん。詠の力はウチがよう知っとる」
親指で優しく撫でる。ぎゅうと眉を寄せた詠を、安心させられるように。
すぐにやめて、気恥ずかしそうに立ち上がってから背を向け、くつくつと喉を鳴らした霞は歓喜から弾む声を続けた。
「ま、鈍っとらんかったら、やけどな。あれから磨いて来たウチらの
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