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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
神意の祭典篇
41.神意の悪意
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だったかもしれない。
 そうだ。あの時もそうだった。
 この男だ。立上はこの男に……

「立上さん!」

 少女の声が聞こえた。それとともに目の前の化け物が吹き飛ばされる。

「なんでおまえがいるんだ?」

 痛む身体を無理やり起こして少女の方を見る。茶髪が肩にかかるくらいの長さの少女が心配そうに立上を見ている。

「立上さんを助けに来たんですよ!」

 片世董香(かたせとうか)が対魔族武術“虎皇神法”の構えをとる。膝をわずかに曲げ、右手を後方へと引き、左手で相手との間合いをとる。
 砂煙が舞う中から現れたのは、もはや吸血鬼の身さえ捨てた化け物となった緒河彩斗の姿だった。

「ソれじャダめ、ナんだ……もット、強ク……なラなクチゃ!」

 彩斗が地を蹴り、一気に董香との間合いを詰める。その速さに董香の反応が追いつけていない。
 右腕から鮮血が噴き出す。右腕が彼女の身体を薙いだ。
 その空間が消失する。次元が壊される。
 ギリギリで回避した董香が反撃にでる。強く地面を蹴りあげて両手に膨大な量の呪力が溜め込まれていく。大気へと吸血鬼の眷獣に匹敵するほどの魔力が放出されていく。

「虎皇雷撃──ッ!」

 虎皇の一撃が化け物の身体めがけて放たれた。凄まじい衝撃波が大気を震わせた。
 確実に決まった。あれほどのダメージを受けてはいくら“神意の暁(オリスブラッド)”といえどもすぐに回復することなどできない。

「え……?」

 少女のか細い声が響いた。そのあと、わずかに遅れてパァン、と乾いた音が鳴り響いた。
 先ほどまで大気を震わせていた魔力が一瞬で消え去った。あれほどの魔力の塊が一瞬で消失するなどありえない。
 魔力を無力化する術式でも発動しない限りはだ。

「血……肉ヲ……喰ワセろ!」

 彩斗が董香を喰らおうとする。

「人のもんに手出してんじゃねえぞ」

 奈落の門番の不可視の壁が化け物の身体を吹き飛ばした。

「す、すみません、立上さん」

「おまえは俺の栄養だ。まだ死なれちゃ困る」

「そう……ですよね」

 董香はわずかに笑みを浮かべて、ボロボロになった服の襟をずらし、透き通るような白い肌の首を露出させる。
 立上は躊躇することなく首筋に牙を埋めた。董香の口から弱々しい吐息が洩れた。

「肉ヲ、血を……! アい崎……かノn……ら・フォriアァ……ゆu麻!?」

 恐怖が再び姿を現した。
 それはもはや恐怖ではない。立上が倒すべき対象でしかない。
 動き出した彩斗に身構える。
 魔力は十分回復した。身体の回復は間に合ってはいないが戦えないわけではない。

「殺ス……ぶッコroす……きe去れ!?」

 それは唐突のことだった。
 
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