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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
神意の祭典篇
41.神意の悪意
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降り注ぐ。
 七体の眷獣の咆吼が響いた。

 ──そして




 先ほどまでのことが嘘だったように周囲には来た時のような静寂が制していた。
 こんなに今日は静かな夜だっただろうか?
 それよりもどうなったのだろう。
 身体が重い。感覚がない。
 彩斗が立っているのか、座っているのか、倒れているのかもわからない。わずかに動いた首で上を見上げる。
 そこにはいつもと変わらない暗闇が広がっていた。先ほどのように蠢くものもなければ、降ってくるものもなかった。
 倒せたのか?、と思ったがそれは機能を失いかけている耳が捉えた。

「よくがんばったな、緒河ァ」

 その声は一瞬のうちに彩斗を絶望へと叩き落とした。

「た……てが、み……」

 彩斗の視界に映った立上は、無傷だった。
 そうだった。彩斗は“大蛇の母体(ヘラ・バジリスク)”の蛇を止めただけで立上を止めれたわけではなかった。
 蛇を止めるために彩斗が払った代償はあまりにも大きすぎた。身体中には、無数の小さな歯型がついている。あれほどの攻撃を全て防ぎ切ることなどできなかった。
 それでも彩斗は動かなければならない。立上を止めるためにだ。
 彩斗が一歩踏み出そうとする。力の入らない足では身体すら支えられないということかその場に崩れ落ちる。
 尖った瓦礫が落ちている地面に倒れて痛いはずなのに痛みを感じない。もはや痛覚さえもないということだ。
 猛毒が身体に回ろうとしているのだろう。
 魔力もなく身体に猛毒が回っている。このままいけば彩斗は死ぬであろう。だが、死ぬ前に彼だけは止めなければならない。
 力の入らない足に無理やり力を入れて立ち上がろうともがく。
 ──動けよ! まだ終われねぇんだよ!
 意思に反して、彩斗の足は全く動かない。背中を押してくれる彼女の声も聞こえない。
 もう彩斗に戦う力はないということを示していることだ。
 だが、魔力があればいい。魔力さえあればまだ行ける。

「魔力……回復……血……吸血……」

 すると彩斗の中に一つの答えが降りてくる。
 いや、違う。誰かが答えを教えている。記憶の中に眠っている彩斗ではない誰かが一つの答えを導き出す。
 その答えに従う彩斗は自らの右腕に牙を尽きたてた。
 それは吸血行為だ。口内に鉄の味が広がる。
 しかし、自分の血を吸った程度では回復などできない。さらに言うなら彩斗の傷はその程度で癒せるほどではなかった。
 そんな彩斗に吸血行為よりも多くの魔力を体内に取り込む方法をそいつが教える。
 そのまま彩斗は尽きたてた牙をさらに深く抉りこんでいく。痛いという感覚はもうないようだ。痛覚がなかったのが責めてもの救いだったのかもしれないな。普通ならこんな行為苦痛でできるわけがな
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