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東京百物語
ゆり
三本目
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夫だってわかるのよー!きいぃ〜!」



 青山は顔の位置まで右手を挙げて、山下に見せつけるようにひらひらと振った。それを見た山下は、カッと頬に血を上らせる。



「なん・・・そう・・・そういうこと!?」



「え、どういうこと?」



「ま、それは僕と日紅の秘密にしておこうかな」



「もう、ヤダ!清のばかぁ〜」



 山下は赤くなったまま、頭を抱えている。



「何したかは知らないけど、山下は大丈夫、青山くんもその様子じゃ大丈夫、てことは、私とおばあさんは?」



「二人とも問題ない。ハンカチ持ってる?」



「え、ハンカチ?昼間青山くんに借りたものしか・・・まさか、これ?」



「うん、それ。あげるからお守り代わりに持っててね」



 にこりと青山は笑う。なんてことだろう。とんでもない人に憧れていたようだ・・・ゆりは激しく脱力する。



「じゃあおばあさんは・・・」



「あの人はすごいよ。守護霊がすごい」



「へぇ〜そんな強いんだぁ、あのおばあさんの守護霊!」



「うん、ある意味」



 山下がノンキに口を挟み、それに青山が神妙な顔で頷く。



「・・・ある意味?」



 ゆりは流せずげんなりしながら聞き返す。



「彼女の守護霊は、ものすごいごうつくばりで自己中心的で強欲。近づいた霊の酸いも甘いも骨の髄までしゃぶり尽くす気満々。だから、霊が極力関わりあいにならないよう避けて通っているぐらい」



「それは・・・」



 ゆりは絶句した。霊の世界もシビアなようだ。



「だからあの霊が押しくらまんじゅうしている部屋に残していっても大丈夫。今頃ひょろひょろの出がらしみたいになってる霊が沢山、部屋の外に山と積み重なってるんじゃないかな」



「アーメン」



 山下が合掌した。何か違う。



「・・・なんだ。もう・・・なんか、気が抜けちゃった・・・」



 ゆりはくたくたと座り込んだ。



「青山くん。確認だけれど、私はもう大丈夫なのね?」



「うん。真犯人がこうして捕まったことだしね。ただひとつ、忠告しておきたいことがある」



 青山の声がふいに真剣さを帯びた。



「霊のせいだ、と思っている間、とても怖かっただろう?自分のわからないものに恐怖を感じることは、人間の深層心理に刻み込まれていることだから仕方が無いと思う。でも、わけがわからないことを全部霊のせいにしないで欲しい。生きている人間でも、自分がしていないことでも悪いことは全部全部おまえのせいだお
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