第22話 初陣 その2
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司令官閣下、上陸・接収は後でもできます、まずは部隊の半数で包囲網を維持すべきです。とにかく四隻では少なすぎます」
俺は思わずリンチにそう言った。リンチの指示が間違っているとは思えないが、戦力差を十分理解した上で今更脱出を試みる相手であれば、少なくとも追撃戦力を減らす為に『置き土産』を残していく可能性が高い。脱出する海賊集団ばかりに目を向けては、いらぬ犠牲を払う事になる。それに脱出した船が『ブラックバート』団の全てである保障などありはしない。逃走した一〇数隻のほうが囮の可能性もある。
だが俺の諫言をリンチは首を振って否定した。
「奴らは全力で逃げに移っている。一〇数隻となれば奴らのほぼ全戦力だ。見ろ、逃走する敵艦の内に報告のあった戦艦がいる」
「脱出した艦艇は一〇数隻です。掃滅するのに部隊の半数五〇隻でも十分お釣りがきます。それより根拠地に不用意に近づいて損害をこうむる方が危険です」
「数の少ない海賊が、わざわざその数を割って逃走を図るわけがない。貴官も言っていたではないか、『ブラックバート』の頭領は元軍人の可能性があると」
「だからこそです。一〇数隻とはいえ、我々は彼らの正確な数を知っているわけではありません」
「貴重な戦艦を犠牲にしてまでか?」
「その通りです」
リンチは俺を一旦睨んだ後、数秒して決断した。
「戦艦四隻で援護砲撃を行いつつ、第三・第四巡航艦分隊は根拠地に接近・上陸せよ。他の艦は脱走する海賊艦を追撃!」
限りなく一方的な折衷案か、と俺は溜息を押し殺してその命令をオペレーターに伝えた。
戦艦を含む海賊艦がこの根拠地に潜んでいたという事は、根拠地発見を主目的としていた俺達の予想になかったわけではないが望外の事態だった。それが俺達の攻撃が開始されるまで、根拠地の内部に潜んでいたということ。それ自体がおかしい。常に多数の艦艇で襲撃を行う海賊の指揮官としては手落ちにすぎるし、こちらが根拠地を発見できないと考えているのであれば、間抜けにも程がある。
だが相手の愚かさを期待するというのは、軍人としては最もあってはならない態度だ。俺はいったん司令艦橋を離れて、索敵オペレーターの階層まで降りて、観戦中の暇そうな准尉の階級章を付けた背が高くてアントニナに似た褐色肌の若い女性下士官を一人捕まえて聞いた。
「この艦に次元航跡追跡装置はあるか?」
「えぇありますが……ですが偵察専門の艦艇とは違ってそれほど出力があるわけではないですよ。普通の戦艦や巡航艦と変わりません」
唇のやや厚めの、かなり若い、まだ一〇代の航海科の准尉は俺を見るなり敬礼して応えた。どこかで見たことがあるような気がするが、まぁ気のせいだろう。
「この星区全体をカバーするのに必要な艦艇数はどのくらいだ?」
「のべ数でしたら……まず一〇〇〇
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