思い出-メモリーズ-part1/半妖精の友達
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ファは微笑みながら手を伸ばす。すると、手を差し伸べられた彼も恐る恐るながらも、テファの前に姿を見せてくれた。
それが、テファと彼の内緒の友情の始まり…テファにとって最初のお友達との日々が始まった。
母や、仕事の都合でたまにしかからの教育をさぼることのなかったが、テファはそれ以外の時間はほとんど暇な時間ばかりで、彼と会うまで私室で本を読むか、両親や教育係から教わったことを復習したりする意外にやることがなかった。そのため、彼とはほぼ毎日会いに行くことができたのだ。
ある日、森の木陰の下で、彼が取ってきてくれた木の実を二人一緒に食べた。
「おいしいね」
屋敷の料理人が作る料理もおいしかったのだが、テファにとって森の木からとれる実も引けを取らない、自然特有のおいしさを持っていたため、木の実の味が癖になっていた。すると、もっと食べるといいよと言うように、彼はテファに別の木の実を手渡した。
「これもいいの?」
彼はテファの問いに快く頷いてくれた。渡してくれた木の実も、とてもおいしかった。
「ねえ、この木の実、どこで生ってるの?」
テファは、彼がくれた木の実がどこでとることができるのか知りたくなってそれを尋ねた。木の実をくれた彼をきっかけに、現在のテファは食事の際に新鮮でおいしい木の実を選ぶようになったのである。
テファの父、モード大公には忠臣とも言える存在がいた。それが、今は取り潰された『サウスゴータ』である。父の縁から、テファはマチルダと幼い頃からの知り合いだった。
「テファ、こいつは一体…!?」
「大丈夫よ、マチルダ姉さん。この子は悪い子じゃないの。ほら」
時折親の訪問と同時に遊びに来てくれた、少女だったころのマチルダにも、テファは『彼』を紹介した。もちろん、いきなりクマみたいな怪物が現れ、しかも妹同然に見てきた子と仲良くしていたことにマチルダは驚いたものの、木の実をもらったり一緒に遊んだりして打ち解けていった。テファが木登りしたときはやめるようにマチルダは必死に降りるように説得して肝を冷やされたと、現在のマチルダは後に語っていたが。
それからは、近くの小川で『彼』と共に水を掛け合ったり、丈夫そうな木を見つけて木登りをしたりして遊んだり、ついでに木の実を一緒にとって食べたり…。ずっと家に閉じ込められていたテファにとって、はつらつとした日々だった。時折、木から落ちたり転んだりして怪我をしてしまったときは、彼が怪我の部分について土や泥を舐めとって応急手当てをしてくれたこともあった。
手当てをしてもらったある時、『彼』はさらに、テファにあるものを差し出す。
「それ、なぁに?」
彼女は『彼』のおかげで、あらかたの木の実のことを知っていた。けど、屋敷の本棚にあった図鑑でも見たことのない実だ。
「木の実みたいだけど…ちょっと固そう。でも、あり
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