第21話 初陣 その1
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の艦艇を整備・隠匿できる宙域を幾つかに絞って、一つ一つ虱潰しに潰していくという方法だ。手伝っている俺としても、堅実で成功の見込みが大きいと思えてくる。
「空振りしたら、また次の星区に向かう、というわけですか」
「移動する宇宙船にぶっ続けで乗っていられるような、長征世代のような奴じゃなければな」
「たしかに」
人間の生理機能として、重力のない場所での長期間生活が健康に与える影響が大きいことは、前世でも周知の事実だ。この時代の重力制御と慣性制御の整った宇宙船であれば、そういった悪影響は減るのは当然だ。だが、亜空間跳躍航法はどうにもならなかった。ヤンが幼い頃からいわゆる『ワープ酔い』で発熱したこと、妊婦の母体と胎児に悪影響が出ることも含め、亜空間跳躍航法が人体に与えるストレスは無視できないものだった。
長征一万光年は五四年にわたる長期の宇宙船航行であった。それも帝国の追撃と危険空間航海というハンデを背負って。当然造物主の悪意もあろうが、ストレスから来る事故により失われた命も多いだろう。当初四〇万人で出発した脱出者は、一六万人余まで減少している。
宇宙海賊は別に自殺志願者でもなんでもなく、不法に利益を貪る集団である以上、ある程度重力を有する小惑星規模の補給基地ないし、休養のための根拠地がなければおかしいという話になる。戦艦クラスの艦艇を整備するには、それなりの設備が必要になるし、転売するならば保管用の宇宙船等を係留する場所も必要だ。
「虱潰しをするためにわざわざ数少ない宇宙母艦を全部連れてきたんだ。員数不足とはいってもな」
「……パイロット不足は本気でどうにかしたいところですが」
「みんなナンバーフリートに持って行かれるんだ。こんな警備艦隊で充足率四〇%というだけでもまだマシさ」
大規模な小惑星帯を有するD星区の捜索には、やはり小回りのきくスパルタニアンは欠かせない。それを多数搭載する宇宙母艦は、今回の作戦でもっとも重要な艦艇だ。だがリンチの言うとおり、同盟軍は常にパイロット不足。士官学校や専科学校の専攻者は勿論のこと、各部隊内でも希望者を募る『部隊内選考』もある。それだけしてかき集めたパイロットも、訓練で半数以下に絞られ、帝国軍との戦闘ではドックファイトだけでなく母艦ごと吹っ飛ばされて、あっという間に失われてしまう。ゆえに補充は正規艦隊が優先され、地方艦隊は後回しにされる。だから充足率四〇%というのは奇跡に近い。これもリンチがかなり強引に引っ張り、かつ慎重に運用してきた苦心の結果だ。わずか四〇〇機とはいえども、それを全部投入するリンチの意気は高い。
「成功するさ。その為に俺はここまで準備してきたんだ」
D星区にワープアウトした後、リンチが独り言を呟くのを俺は聞き逃す事は出来なかった。一〇一隻とはいえ、艦隊は
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