暁 〜小説投稿サイト〜
熱い手
第五章
[2/2]

[8]前話 [9] 最初
うなの?」
「正直に言っていいよね」
「ええ」
 むしろここでは何としても正直に言って欲しかった。それが今の郁美の本音だった。
「御願い。言って」
「同じだよ」
 微笑んで郁美に答えた。
「郁美ちゃんと同じだよ。同じ考えだよ」
「そう。それじゃあ」
「このまま歩こう」
 その微笑みのまま郁美に勧めてきた。
「このまま二人で。手をつないだまま」
「誰かに見つかるかも知れないのに?」
「見つからないよ」
 実は根拠はないが自信があった。絶対に見つからないという自信が。
「だから大丈夫だよ」
「信じていいのね」
「うん。信じて」
 その自信のままに郁美に言葉を返す。
「できたら。これからもずっとね」
「ずっとなの?」
「何時までも何時までも」
 話は遥か先のことにまで及んでいた。
「僕を信じて。僕も郁美ちゃんを信じるから」
「お互い信じ合って」
「手を握り合っていこう」
 この言葉と一緒に郁美の手を少し強く握った。その手はやっぱり熱かった。
「ずっとね」
「わかったわ。じゃあずっとね」
「うん、ずっと」
 二人で言葉を確かめ合う。そこにあるものも。
「一緒だよ。僕達は」
「ええ。それじゃあずっとね」
「手を握り合って」
「二人で並んで歩いて」
 真っ赤なままの顔を見合わせて顔と同じ色になってしまい熱くなっている手で握り合ったまま二人は歩き出した。前からは大きな赤い夕陽が見える。それが二人の影を長く見せていた。二人はその影を見ることなくただ前を見て並んで歩き出していた。長い道を二人で。


熱い手   完


                  2008・8・17

[8]前話 [9] 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ