幽鬼の支配者編
EP.25 暴走する魔人
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論付けたのは早かった。
“獣王の魂”の丈夫な身体の恩恵か、すぐに意識がはっきりしたエルフマンは魔人にそう呼びかけると、彼女は動きを止める。
「エ、ルフ……マン…………ウゥ……」
伝わったのか、と彼がホッとした矢先に、彼女は声を絞り出したかと思うと……急に頭を抱えて苦しみ始めた。
「ア、ガ…………」
「姉ちゃん! しっかりするんだ!!」
「ウ、ア……アアアアアアアアアァァアアア!!」
エルフマンの懇願に、更に苦しむ魔人は、獣じみた咆哮と共に拳を握って彼に飛びかかる。
「(涙? ……そうか、姉ちゃん……)」
殴りかかる魔人の目に光るものを見たエルフマンは、悲壮の決意を固めた。
どんな力にもリスクというものはあり、それは“接収”も変わらない。
“接収”は人間だけでなく、人外の生物の力さえ身につける事が出来る強力な魔法である。
そして、そのリスクとは制御が難しい事と……制御できなければ、“接収”元の意識に?まれ、暴走してしまうという事だ。
かつては完全に支配していた力だが、2年ぶりに使うミラジェーンが持つ悪魔の因子が、彼女の制御を超えてしまっているのは火を見るより明らかだ。
悪魔の因子は持ち主の心の闇……すなわち負の感情を強め、浮き彫りにしてしまう。全体で見れば、彼女の心を占める負の感情などほんの数%だろうが……悪魔因子の特性は変わらない。
そして、彼女の負の感情とは……リサーナを救えなかった無力な彼女自身への怒りか。
加えて、この“獣王の魂”はリサーナの命を奪った張本人だ。
これだけの材料があれば、頭脳に自信のないエルフマンでも、優しいミラジェーンが自分に襲い掛かった説明は付く。
復讐心と自分への怒りで複雑に入り混じった錯乱状態で悪魔の因子を制御できず、心を持つ者なら誰でも持っている、たった数%の負の感情に振り回されているのだ、と。
だから、彼は覚悟を決めた。
「俺は……俺は漢だ! 漢なら、姉ちゃんの一人や二人、受け止められないでどうする!!」
それが自分の罪ならば、彼女の暴走が収まるまで何度でも、彼女の怒りと悲しみを笑って受け止めてやる、と……。
だが、泣いている魔人が獣王に殴り掛かる事は無かった。
「……え……?」
打撃音と共に、彼らの間に割って入った影が二つ。
「咄嗟に出ちまったが……間に入って良かったか?」
「一体どうしたんだ、ミラジェーン!」
ワタルとエルザだ。
事情の分からないワタルは魔人の拳を掌で受け止めながら、エルフマンの無事を確かめるとともに尋ね、エルザは自分の弟に向かって攻撃を仕掛けた魔人に険しい表情で詰問している。
「退け、ワタル、エルザ! これ
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