第20話 胃痛
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思いつきもしなかったに違いない。
リンチに足りないのは心の余裕。一五年後の同盟崩壊という原作の歴史を知っている分、俺もリンチを笑えない。このままリンチの副官を続けたとして、数年後リンチはエル・ファシルの防衛司令官になっている。俺がリンチの副官として同行することになるとしたら……エル・ファシルの奇跡はおきず、ヤン=ウェンリーという奇才は世に出ることはない。若干席次の上がったヤンがエル・ファシルに配属されるかは未知数だが、仮に俺がヤンの代わりに脱出の指揮を執り、イゼルローンを攻略して『ミラクル・ヴィック』『魔術師・ヴィック』など呼ばれたとしても、正直金髪の孺子に勝てる自信は全くない。その時、ヤンが艦隊の指揮官となっている可能性はほぼゼロだ。自称革命家も部隊指揮出来ているとは思えない。
そう考えるとまた胃が痛みを訴え始める。俺はインスタントラーメンをかき込むと、PXで買った胃薬を飲み、早々に横になった。
今は遠くの未来よりも一夜の睡眠がほしい心境だ……っていったのは誰だったか。思い出すのがおっくうになるほど疲れるというのは本当にありえるんだなと俺は思い、目を閉じた。
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