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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第20話 胃痛
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防衛司令部の指揮官・幕僚スタッフを軽蔑すらしている。そしてリンチが第七一警備艦隊を率いて治安維持任務を着実に実行していけばいくほど、両者のすきま風は強くなっていく。

 これはリンチと他の同僚の相互不理解と不信感、上層部とくに棺桶に足を半分突っ込んだような防衛司令官のベレモン少将の統率力のなさが、時間が経つにつれ増幅・拡大していった結果だ。リンチにもう少し他者を許容する寛容というか器量があれば、少し話は変わっていたかもしれないが、帝国との前線が遠い上に海賊には戦艦クラスの大型艦も優れた軍事指揮官もいない故の緊張感のなさが、彼を必要以上に強情にさせているのかもしれない。

 このような状況は好ましくない。もし許されるのなら、グレゴリー叔父に超光速通信を入れて第一艦隊にお出ましを願い、ついでに査閲部長と憲兵司令部と人事部長にも通信を入れて、中央の介入をお願いするだろう。だがそれは越権行為というだけでなく、軍律・軍秩序を乱す行為である。そもそも自分の無能を宣伝するようなもので、俺としてもいささか不満がある。ならば副官として出来ることを順序よくやっていくしかない。帝国軍という不確定要素がない以上、時間には若干の余裕があるはずだ。もっとも俺の人生のほうには、それほど余裕があるわけではないんだが……

 とにかくせっかく数がいても、有効に運用できなければ宝の持ち腐れ。二人の巡視艦隊司令官の副官と腹を割って話してみて……PXへ胃薬を買いに行く羽目になった。そりゃ、アンタ達専科学校出身で中尉になった方々から見れば、士官学校の首席卒業者など煙ったいことこの上ないでしょうよ。しかもリンチがことある毎に頼りになる士官学校首席卒の俊英とか宣伝してくれれば、いじめてやろうとか思うのも無理ないとは思いますがね。だからといって端から「各々の職責を全うすることが重要なのではないかね?」と大上段に袈裟斬りはないでしょうが。

「だからそんなことやっても無駄なのだ」
 俺の動きを、嫌いな巡視艦隊司令官から嫌みたらしく指摘されたリンチは、不吉きわまりないチョコレートを口に放り込みつつ、鼻息荒く俺に言った。あの中のアーモンドを噛み砕く、身の毛もよだつ音が俺の意気をさらに消沈させる。
「奴らが馬鹿とは言わんよ。それなりに武勲を挙げているからこそ、その地位にいることぐらいは分かってる。だから俺や貴官のような士官学校卒に対してすぐ『軍のイロハも知らんクセに』とか僻みがはいる。俺の提案に対してとにかく反対したくなる。根本的に提案の善し悪しではなく、提案者の好き嫌いで判断するんだ。そんな奴らをまともに相手しようとか、まともにしようとか、考えるだけ時間と労力の無駄だ」
「しかし、第七一警備艦隊の戦力だけでは、現在のケリム星域外縁および三次航路の安全維持は不可能です」
「不可能じゃないさ
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