第一部 学園都市篇
断章 アカシャ年代記《Akashick-record》
??.----・error:『Nyarlathotep』V
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》の下賜した酒を、言うに事欠いて……『不味い』、じゃと?」
だが、娘にはそんな心模様などは伝わらない。自らの丁重、彼女にしては最大限の歓待を貶したと取って。背後の刀を掴み、秀麗な眉目を不愉快に歪めて目の前の『傾奇者』を睨む。
その圧力たるや、背後の『甲冑』の比ではない。世界が歪むのではないかとすら感じる、緋色の瞳の覇気に。
「あ、いや、そうじゃなくて……いや、それよりそろそろ俺、現実に帰りたいんだけど」
しかし、しかし。これが現実ではなく夢だと知っているつもりの嚆矢は、目覚める方法を思案するだけで。
足下、零れた金平糖。それを次々に掠め取って飲み込んでいるショゴスにも、注意すら行かず。
「……よかろう、そこまで言うのであれば。さぞかし『貴様の世』には、美味なる酒があるのであろうて……」
怒り一転、不敵な笑顔に戻った彼女が見詰める視線。それに、ショゴスが一瞬、怯えるように震えて。
投げ渡された刀、ずしりと重い。鮮やかな血色の、返り血に染まったかのような、恐るべきと本能で悟る刀であった。
「『長谷部 国重』……無礼者を圧し斬った我が佩刀じゃが、今回は特別じゃ。それを褒美にくれてやる。出口なら其所じゃ、好きに下れ」
ぱちんと、娘の指が鳴れば──無人で開け放たれた襖が数枚。丁度、娘と甲冑の中間の襖。その先には……螺旋階段。焔に包まれ、金色に輝いている。部屋の熱気は、この為か。
息が詰まる。それは、決して足下から立ち昇ってくる高熱の為だけではない。
「儂は“双子”のように優しくはないのでな……この『安土天守閣』より去りたくば、それに見合う決意と覚悟を見せてみよ」
嘲笑うように、憎々しげに。娘が告げる。熱、だけではない。目には見えないが、何かもっと、『焔に似たもっと悍ましきモノが跋扈している』と。人の、矮小たる本能であるからこそ、それを理解できた。
見詰める。『主』の許しを得た『何か』どもが、こちらを見詰めている。恐らく、それが“何か”を理解すれば、正気では居られないものが。彼がどう足掻こうと、勝ち目の無い炎の『旧支配者』達。くねくねと、陽炎の体を揺らしながら、待ち受ける『兵』共が。
「…………オーケー、それじゃ」
それだけを口に、螺旋階段に歩み出る。死出の一歩か、娘は無感動、鎧は歓喜をもって、それを眺めて。
「────またニャア、次は名前くらい聞かせてくれナーゴ、エキゾチックなお嬢さん?」
『Mr.ジャーヴィス』の口調で、頭にショゴスを纏って黒豹とした男は飛び降りる。螺
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