彼と女と唐突と
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伏せた直後、行き成りベンチに片膝を掛けて、海童に前から寄り掛かる様な格好を取る。そして、魅惑のテクニックを披露した。
「きさっ、貴様の胸元を見せ、見せんかあっ!?」
「は? 胸元?」
訂正、テクニックもクソも無い力技であった。しかも、彼の胸元は温泉で何度も見ているのに今更こんな事を聞くという事は、かなりテンパっている事もうかがえる。慌て過ぎである。
何やってんだと呆れた顔で、海童が一先ずコダマを押しのけようとした・・・その時。
「ちょおおおぉぉっと待ったあああぁぁっ!!」
まだ尾行を続けている春恋達が隠れている植え込みとは別の植え込みから、四人の人間が飛び出して来た。
「誰だ・・・?」
「誰じゃっ?」
「俺は小林英!」
「僕は田中美斐男!」
「私は山田椎助! ・・・そして隣が今しがた入会した蛇山栄輝さん!」
(どっちかと言うと、入会“させられた”ように見えるんだがな?)
何で入会させたのかはさて置き、ストップコールを掛けた彼等の内一人美斐男が、何やら感情がやたら籠った声で叫ぶように話し始めた。
「自分達は姫神コダマファンクラブの者! 貴方の可憐さと美しさに心奪われ・・・そして心を一つにした者達です!」
そう言えば以前温泉の脱衣場で、碓がこのファンクラブの事を言っていたなと、海童は思いだした。確かに彼らはコダマ命と書かれたはっぴを着て、英はそのコダマ命が無駄に達筆な大文字で書かれた旗を持っている。
「貴方は僕達の女神であり、正に憧れそのもの・・・そんな貴方が! そんな有象無象の輩に心を奪われてしまうなど・・・あってはいけない! 許されないのです!」
(オイオイ・・・まるで女神というかタチの悪いアイドル狂信者だな)
仕事でやっているアイドルならともかく、コダマは幾ら容姿が整っていようとも所詮一生徒でしか無い。そんな彼女が誰に恋しようが(恋している訳ではないが)勝手なのに、彼らの発言は本当に海童の言うとおりちょっとタチの悪い物だった。
そこまでさせる魅力がコダマにあると、そう受け取れなくもないのだが。
「たとえ力尽くでも! 先へ進んでしまう事を阻止しなければいけない・・・行くぞ皆!」
「「男を取り押さえるぞっ!!」」
やたらと必死に向かってくる英、美斐男、椎助を見た海童が右手を構え、背後にある湖に“破壊の力”をぶつけて脅して去らせようかと力を込め始める。
だが、それをコダマは片手を広げてとどめると、指二本をそろえて軽く目の前に付きつけた。
「
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