彼と女と唐突と
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れて来られ、周りには何だか怪しげな店ばかり立ち並んでいるのが見えて、本当に大丈夫だろうかと目を細める。
やっと着いた様でコダマが立ち止まり、目の前の扉を開けるとカランカランと鈴の音がなった。
「「「お帰りなさいませー、ご主人様、お嬢様ー?」」」
店内に足を踏み入れたと同時ぐらい、両脇と前方から聞いた事のない出迎え文句を聞き、普通のレストランと比べると少し場に似合わない格好の店員を見て、海童の表情は呆気にとられた物になる。
案内されるままに席に座って一先ず荷物を置くと、向かいに座ったコダマに聞いた。
「ここは一体?」
「メイド喫茶じゃ。知らんかったのか?」
「名前だけなら・・・」
恐らく名前を知っている『だけ』で、メイドが何なのかも分かっていなかったであろう。その証拠に、コダマから簡単な説明を受けてもまだ首を傾げている。
そんな二人に、出迎えたメイドとは違う女性がテーブルの傍に来て、ちょっとハッチャケたポーズを取った。
「ご主人様にお嬢様っ、メイド喫茶「メイプル」へお帰りなさいませー? 今日はこの『あずきん』が、美味しいお食事と楽しいサービスで日々の疲れを癒して差し―――」
「・・・志那都先輩?」
「上げまっづ!?」
驚きのあまりか銀のトレイを床に落とした女性は、何とメイド姿なれども志那都アズキその人だったのだ。
固まってしまうアズキへ向けられる海童の目は、ここで働いていたのか、といった別段悪意も照れも何も無い視線で、コダマは知っていたか別に反応もせずメニューを開いている。
「ワシは何時も通り慈しみのカルボナーラ、カイドウには情熱のサイコロステーキでも頼もうかの」
ごく普通に注文してきたコダマへアズキは詰め寄り、かなり必死な声と形相で海童を指差し講義した。
「ちょっ、おまっ、姫神!? どうして、何で海童を連れて来てんだよっ!?」
「おやぁ? お嬢様やご主人様へそんな口を聞いても良いのかのぉ? なぁ、あ・ず・き・ん?」
「こんのっ・・・!?」
コダマが常連客でしかもよく考えなくても誰を連れてこようが彼女の勝手なので、アズキは言う事が無くなってしまい黙る。
地面に落ちたトレイを手にとって立ち上がり、アズキはコダマでは無く海童の方を向いた。
「それではご主人様、お嬢様。お料理の方すぐにお持ちします・・・のでっ!!」
「いっ!?」
海童が驚くのも無理は無い。何せ、それなりに固い筈のトレイを素手で真っ二つに折り曲げてしまったのだから。
唖然となる海童へ、アズキはかなり引き攣った笑みを浮かべて再度向き直る。
「ごゆっくりと、
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