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バカとテストと白銀(ぎん)の姫君
騒がしい春の協奏曲(四月)
第一章 小問集合(order a la carte)
第四話 バカと鼻血と乙女の事情
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いもそんなのだったらよかったのに…」
どこか遠い目をしている彼女に、僕は女友達として話を聞いてあげるべきなのか、そっと置いている方が優しさになるのか迷った。
どうしようかと思って目線をふらつかせていると、弁当を開けずにいるひもじい少年に目が止まった。
「今日ぐらいはまともな物を食べたらどうなのじゃ。」
「そう思うなら奢ってよ」
友人たちが食べているのをうらやましそうに眺めているだけの吉井は、今にも口から涎が垂れそうになっている。
「吉井君はお昼、食べないんですか?」
「姫路さん、いや。あの、一応は食べるよ。あは、あははは……」
苦笑いで何とかごまかそうとする。すなわち、本当に。
「ゲームは食べられませんよ?」
「無理だな、それは。」
坂本からの即座な合いの手が入る。
「ふ、ふっふん。いいもん。ソルトウォーターを食べてくるもん」
全員の優しい目線が彼に突き刺さる。
以後心地悪そうにしている吉井は弁解も、ボケだと訂正することもできずにいる。
最も、冗談であってほしいのは僕の希望的な観測なのだけれど。
「あの、じゃあ私が吉井君のお弁当、今度作ってあげましょうか?」
そう健気にも尋ねる姫路さん。
僕のすぐ隣の島田さんの気配が険しくなる。
これにもやはり、何かいじりの一つでも入れた方がいいのだろうか、前の学校では社交的でなかったから、間を掴むのは巧くないだろうから。
「ありがとう姫路さん。実は初めて姫路さんに会ったときからす……」
イタズラをしてみたい気持ちはこれほどまで抑える事は難しいのか。
思考がまとまる前に僕は言葉を口に出していた。
「吉井君、そこで振られましたら明日のお弁当は無くなってしまいますよ?」
「好きにしたいと思っていました!」

彼の顔が誇らしげに言い放っていた。
どうだ、うまいこと回避して見せただろう と。

「明久よ、それではただ単に変態じゃと言うことをカミングアウトしただけじゃよ。」
屋上の隅っこでいじいじしだす彼の背に、先ほどよりも生温かい目線がさらなる追い打ちをかける。
「へぇ、吉井の分だけお弁当を作るんだ。」
自分からのアクションよりも、一歩早く動かれてしまった姫路さんを牽制しようとする島田さん。
島田さんの発言にびっくりした姫路さんは僕らを見回し、何かを理解したように手を打った。
「そうですよね、明日皆さんの分を用意しますね。」

なんて天然なのだろう
屋上にいたほぼ全員が心中で発してあろう言葉は、お互いの顔を覗きあうことで確信に変わっていった。

ふと足下が涼しいなと思って、見てみればスカートの裾が揺れていた。
少し風が出てきたらしい。
僕の制服は他の女子の制服と比べて丈が倍ほどあるから下着を除かれることなんてないけれど……
何かの資材の上で足を組み座
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