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無欠の刃
下忍編
植え付ける
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そりと笑った大蛇丸は、無防備なカトナの首めがけて飛び込んだ。
 それを黙視した瞬間、カトナの赤き衣がうねり、大蛇丸に向けて一つの尾が突きだされる。
 しかし、寸での所で大蛇丸が立ち止る。首の皮一枚切り裂いて止まった尾が、更にコントロールされ、より長く、より鋭くとがろうとした時。

 大蛇丸の首が、伸びる。

 こればかりは、流石のカトナも予想外だったらしい。
 目を見開いた後、カトナは薙刀を構え、大蛇丸の頭を跳ね飛ばそうとする。
 が、大蛇丸の口が開き、長い長い舌が薙刀の柄とカトナの手をからめ、掴む。

 「っ、真昼!!」

 きんっ、という金属音がしたと大蛇丸が認知した瞬間、カトナの水の性質をこめたチャクラが流し込まれ、薙刀がばしゃりと水になり、柄ごと形を失う。
 液体となった薙刀は、地面に落ち、大蛇丸の舌が空を舞った。
 と、次の瞬間、瞬き一つした後に、カトナは鞘に収まっている柄を握っていた。
 大蛇丸が瞠目するより早く、カトナの手が動く。

 「夕焼!!」

 その声と共に放たれた流麗な居合は、ぐるりと空中で渦を巻いた首が避ける。
 仕留めきれなかったかと、カトナがさらに一歩を踏み出しながら、全身のチャクラを目の前の大蛇丸に向けて集中させたとき。
 首に、ちくりと、痛みがはしる。
 慌てて振り返ったカトナの短刀が相手をとらえる前に、視界にその姿が映る。
 目の前の男と、全くそっくりな姿。一瞬のうちに様々な選択肢がよぎったが、しかし、短刀が相手の腹部に深く突き刺さり、白い煙となって消えたのを視認し、一つに絞り込められる。

「かげ、ぶんしんっ…!?」
「うふふ。背後にも気をつけなきゃねぇ?」

 カトナの並はずれた、一点に対する、途切れることの無い集中力が、裏目に出た。いつの間にか接近してきた大蛇丸の影分身に、気が付けなかった。大蛇丸の隙に、全身のチャクラを前に出したのもまた失敗だろう。後ろにしておけば、ギリギリ守りきれたというのに。
 舌を打ちながらも、全身のチャクラを背後の大蛇丸に向けて尖らせようとした時、どくりと、心臓が鳴る。

 あつっ、い?

 カトナがそう思った瞬間、抑えきれない慟哭が口から出される。目をつぶり、声帯が動くがままに叫んでいるカトナの頬を、黒い墨のようなものが這う。
 それでもなんとか、木に自分の指をくいこませ、立ち続けていたカトナの体を取り巻くチャクラが、黒いもので覆われていく。
 大蛇丸はその様子を満足そうに眺めた後、カトナの首でのたうちまわっている蛇のような形の呪印に向けて笑った。
 そして次の瞬間、彼の姿が風と共にその場から消える。
 残るのは、その男があざ笑うようにして出した声だけ。

 「おやすみなさい、いい夢を見るわね」

 にやにや
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