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退学
3部分:第三章
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夕刻の廊下を歩きながら呟いていた。赤い、いや橙色の太陽の光が彼女を照らしている。その光が麻奈美の、そして良太の影を長く映し出していた。
「何度考えても一緒よ。やっぱり」
「御前学校の勉強はできるけれど馬鹿なんだな」
「何よ」
 良太の言葉にきっとなって顔を彼に向ける。
「あんたに何がわかるのよ。そもそもね」
「御前さ、今バイトしてるか?」
「バイト?」
「そう、バイトだよ。何してる?」
「マクドナルドの店員だけれど」
「そうか。じゃあもう一つ入れてみな」
「もう一つ」
「家でできるのとかさ。色々あるだろ?」
「色々」
「古いのだと造花作りとかよ。そんなのでも」
「・・・・・・それでいけるの?」
「やらないよりはずっとましだろ。あと奨学金とかな」
「奨学金・・・・・・」
 今までそれは考えたこともなかった。
「そんなのも」
「まあ俺には全然縁のないものだけれどな」
 学校の勉強はかなりいい加減にやっている良太にとってはそうである。だが麻奈美はそうではなかった。それも考えられる成績なのだ。
「それ先生に聞いてみろよ。それでやってみな」
「それもあったの」
「他にもあるぜ」
 彼はさらに言う。
「御前の弟や妹にも内職手伝わせてな」
「え、ええ」
 良太の言葉に驚いた顔で頷き続ける。
「それで後は」
「後は!?」
「弟や妹に新聞配達とかやらせな。それでもう全然違う筈だぜ」
「学校も?」
「どうにかなるんじゃねえか?どうよ」
「・・・・・・考えてみる」
 良太の方に正対して俯いて答えた。
「それからどうするか決めるわ。それでいい?」
「いいと思うぜ。とにかくやめるなんて言うなよ」
「・・・・・・うん。けれど」
「何だよ」
 麻奈美は顔をあげてきた。良太を見て問う。
「何でそこまで真剣に考えてくれるの?」
「何でって?」
「クラスメイトだから?」
「さっきからそう言ってるじゃねえか」
 呆れきった声で答えてきた。
「他に何の理由があるんだよ」
「そうよね」
「言っておくけれどな、他の奴でもこう言ってるぜ、俺は」
「他の人でも」
「そうだよ。だからとりあえずやってみろ」
 彼は麻奈美を見据えてまた言った。
「わかったな」
「わかったわ」
 これでようやく決まった。麻奈美はまずバイトを探した。夜だけでなく朝もすることになった。これは兄弟全員でやることになった。新聞配達である。
 そして内職も探した。良太がそれに協力した。


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