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退学
1部分:第一章
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「それであいつ学校やめるらしいぜ」
「!?」
 言われて余計に話が見えなくなってきていた。
「金で!?何でだ!?」
「なあ、宇山よお」
 奥村はそんな彼をみて呆れた顔になっていた。声も同じである。
「御前やっぱり酒止めろ」
「おい、何でそうなるんだ」
「だからな、金がないんだ、あいつの家は」
「何でだよ」
「この前あいつの親御さん両方共死んだだろうが。俺も御前も葬式行っただろうが」
「ああ、そうだったな」
 ここまで言われてやっと思い出す。
「そういやそうだったんだな」
 思い出して自分で納得して頷きだした。
「あの時のことは覚えてるぜ」
 珍しく制服をちゃんと着てピアスやネックレスも外してお葬式に出た。それで線香を捧げたことは覚えていた。というよりは思い出したのであった。
「あれでか」
「ああ、働き手がいなくてな。あいつの家弟や妹が大勢いるから」
「それで学校やめて働くってのか」
「そういうことだ。まあまだ噂だがな」
「そうなのかよ」
 良太はそこまで聞いて大きく息を吐き出した。
「何か可哀想な話だな」
「御前はそう思うのかよ」
「まあな」
 奥村にそう返す。両手を頭の後ろで組んでいた。
「これが俺みたいなのだったら遂に、とかやっぱり、とか言われるところだしな」
「そうだろうな」
「せめてそうじゃないとか言えよ」
「今の酒でぼけた言葉聞いてそんなの言えるかよ」
 奥村はムッとした顔でそう言い返す。
「ちぇっ、けど御前はどうなんだ?」
 今度は良太が問うた。
「可哀想とか思わないのかよ」
「まあ思わないって言ったら嘘になるな」
 奥村はそれは認めた。
「けどな。仕方ないことなんじゃねえのか?」
「仕方ないのかよ」
 奥村を見て問う。
「だってよ、やっぱり本人の問題だろ?」
「ああ」
 言われてみればその通りである。それ以外の何者でもない。
「だからな。俺達があれこれ言ってもな」
「本人がどうなるか、っていうとそうじゃねえか」
「ああ。そうだろ?」
 奥村は言う。


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