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乱世の確率事象改変
大剣持ちし片腕が二人
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送ってはおいたモノの、帰ってくるはずも無く。
 通常の攻城戦では無いな、と分かり切ってはいたのだが……まさかいきなり突撃して来るとは、猪々子は思いもよらなかった。
 近付いてみるまでは徐州でもやられた空城計かどうかも分からない。そう、郭図も猪々子も、多寡を括っていたのが間違い。
 五万もの軍勢となれば、陣容も重厚に組み上げられる。
 数段に別れさせた歩兵部隊の列。弓部隊をぐいちに混ぜ込み、敵の出鼻をくじくは当然のやり口。騎馬部隊を何時出すかもじっくりと決められる。
 しかれども、それは野戦に於いて、向かい合ってのことが多く。今回は攻城戦にと赴いたのだから、行軍の最中に突撃を食らわされては端までの陣容変化には時間が掛かる。

 最後方は別に放っておいても良い。郭図がなんとかするだろう。問題は……慢心と油断、焦りと困惑が織り交ざった先端の部隊である。
 問題にならない程度の風が吹いていた。向かい風だというのが気にはなったが、城攻めの方向を変えればいいだけだと気にも留めていなかった。その結果がこの始末である。
 放った矢は照準が合わずに大半が無駄討ち。別れた五つの敵部隊、数は千ずつには合わせられようも無い。そうして、矢の如く駆ける五つが指示の行き届いていない弱所を見切って……喰い付いた。
 舌戦は無し。戦とは本来このようなモノであるとでも言いたげな程のバカ正直さ。真正面から堂々と突っ込んでくる突撃は躊躇いの欠片も無かった。
 騎馬隊の強みとは衝撃力である。敵軍を蹂躙する一番のモノは、この時代では騎馬隊が主流。平地に於いては絶大な力を発揮する。

 ただ、いち早く最も精強な春蘭の部隊の動きを見切り、重厚な兵列指示を出して対応した猪々子の嗅覚もやはりか。
 同じ匂いを感じ取った彼女は、にやりと不敵に笑っていた……自軍の弓兵が矢を番える前、砂塵が見えた瞬間に。

――ははっ! 戦ってのはそうじゃなくっちゃな? 楽しいよな、楽しくて仕方ない……

 中央の自分の牙門旗目掛けて、必ず春蘭が突っ込んで来るだろうと信じていたのだ。

「お前もそうだよなぁっ! 曹操が片腕……夏候惇っ! 来いよ! 掛かってきやがれ! あたいはっ……此処だぁ――――――っ!」

 怒号、雄叫び、断末魔……野太い声に埋め尽くされている戦場で、彼女の声が快活に響き渡る。付き従う兵はその笑みに釣られて口元を歪め、応えるかのように牙門旗を大きく振った。
 バトルジャンキーである猪々子。元よりその部下達は同じような戦バカばかり。それも……袁紹軍にとって最悪の部隊達を相手に生き残った猛者が圧倒的に多い部隊である。
 幽州では関靖の捨て奸を越えた。
 徐州前半では徐晃隊最精鋭の決死突撃を相手取った。
 後半では残存の徐晃隊や曹操軍の精鋭部隊と戦った。
 この数
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