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乱世の確率事象改変
大剣持ちし片腕が二人
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駄かな。そろそろ郭図は“あっち”に手を回してるだろうし。あんな無茶してもあたいは死ななかったってのは……ホント、怖いなぁ、田豊のやつ。

 ここで追撃を掛けずしていつかける。戦を知っているモノならば誰もがそう思う。しかし、猪々子には、もはや追撃する気がさらさらない。

「ああ、またな。しかし“嘶き”を使うのは止めておけ、とだけ忠告しておいてやろう」

 鳳凰の羽に焼かれるぞ、とは口が裂けても零せない、零さない。みすみす情報を相手に与えるような事は出来ない。

「あははっ! バカ言え、あたいはコレ使うの気に入ってんだ! 黒麒麟の力の欠片だって知ってるけど、あたいは遠慮なんかしてやんない!」

 戦で便利な道具を使うのは当たり前。敵が使っていた道具だからと使わない、そんなバカな事があろうか。道具も、兵器も、戦略も、戦術も……敵味方の区別なく行使されるだけの“力”である。
 ただ、猪々子はそんな事はどうでもよくて、あの部隊が“羨ましい”だけ。
 黒に塗られた金属の笛を握って振り向いた彼女は、可愛らしくはにかんでいた。

「この戦で……にしし、あたい達は欲しいモノぜぇんぶ奪わせてもらう」

 賊の理論であろう。それでも力強く堂々と宣言する彼女の言葉は“理”。個人としての優劣は明らか。それでも食って掛かる猪々子に、袁紹軍の兵達は何を見るか。
 勝つ側が負けた側から奪うのは当たり前。それが許される世の中なのだ、この乱世は。

 言い換えれば、外部勢力の動きで背水の陣に追い込まれた麗羽達には後が無い。もはや、それしか道は残されていないのだ。
 猪々子は難しい事は分からない。
 しかし……乱世の理を、強者の立場として口にする彼女は、兵を率いる将に相応しい。この一戦だけで、白馬に集う袁紹軍は厄介な敵に早変わりしたと言える。
 それを読み取った春蘭は目を細めた。ああ、バカだなと感じながらも、心地よさを感じながら。

「ふん」

 鼻で笑う。不敵に、楽しげに。バカにしていると取れるその笑みは、傲慢さというよりかは強者の風格。

「やってみろ。奪う側がどちらか……その身を以って知る事になるだろう」

 春蘭の言葉を最後に、猪々子は軍を引かせた。ぞろぞろと砂塵を上げて引き返していく軍に、春蘭達も追撃を仕掛けず。
 白馬の戦い第一の衝突は、こうして幕が下ろされた。








 †




「こっちの被害は二千と五百……へぇ、あの短時間でか」

 薄暗い天幕の中で報告を聞いていた郭図は、別段驚いた様子も無く語る。
 先端に配置していたのは新兵が多く、猪々子の部隊以外は最古参はほぼいない。袁紹軍にとっては、必要な絵図を完成させる為の生贄である。

「白馬はもう一回だ。それだけでいい。田
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