大剣持ちし片腕が二人
[13/15]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
駄かな。そろそろ郭図は“あっち”に手を回してるだろうし。あんな無茶してもあたいは死ななかったってのは……ホント、怖いなぁ、田豊のやつ。
ここで追撃を掛けずしていつかける。戦を知っているモノならば誰もがそう思う。しかし、猪々子には、もはや追撃する気がさらさらない。
「ああ、またな。しかし“嘶き”を使うのは止めておけ、とだけ忠告しておいてやろう」
鳳凰の羽に焼かれるぞ、とは口が裂けても零せない、零さない。みすみす情報を相手に与えるような事は出来ない。
「あははっ! バカ言え、あたいはコレ使うの気に入ってんだ! 黒麒麟の力の欠片だって知ってるけど、あたいは遠慮なんかしてやんない!」
戦で便利な道具を使うのは当たり前。敵が使っていた道具だからと使わない、そんなバカな事があろうか。道具も、兵器も、戦略も、戦術も……敵味方の区別なく行使されるだけの“力”である。
ただ、猪々子はそんな事はどうでもよくて、あの部隊が“羨ましい”だけ。
黒に塗られた金属の笛を握って振り向いた彼女は、可愛らしくはにかんでいた。
「この戦で……にしし、あたい達は欲しいモノぜぇんぶ奪わせてもらう」
賊の理論であろう。それでも力強く堂々と宣言する彼女の言葉は“理”。個人としての優劣は明らか。それでも食って掛かる猪々子に、袁紹軍の兵達は何を見るか。
勝つ側が負けた側から奪うのは当たり前。それが許される世の中なのだ、この乱世は。
言い換えれば、外部勢力の動きで背水の陣に追い込まれた麗羽達には後が無い。もはや、それしか道は残されていないのだ。
猪々子は難しい事は分からない。
しかし……乱世の理を、強者の立場として口にする彼女は、兵を率いる将に相応しい。この一戦だけで、白馬に集う袁紹軍は厄介な敵に早変わりしたと言える。
それを読み取った春蘭は目を細めた。ああ、バカだなと感じながらも、心地よさを感じながら。
「ふん」
鼻で笑う。不敵に、楽しげに。バカにしていると取れるその笑みは、傲慢さというよりかは強者の風格。
「やってみろ。奪う側がどちらか……その身を以って知る事になるだろう」
春蘭の言葉を最後に、猪々子は軍を引かせた。ぞろぞろと砂塵を上げて引き返していく軍に、春蘭達も追撃を仕掛けず。
白馬の戦い第一の衝突は、こうして幕が下ろされた。
†
「こっちの被害は二千と五百……へぇ、あの短時間でか」
薄暗い天幕の中で報告を聞いていた郭図は、別段驚いた様子も無く語る。
先端に配置していたのは新兵が多く、猪々子の部隊以外は最古参はほぼいない。袁紹軍にとっては、必要な絵図を完成させる為の生贄である。
「白馬はもう一回だ。それだけでいい。田
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ