大剣持ちし片腕が二人
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でも慌てずに、ゆるゆると振り向いて立ち並んでいる兵士の一人にちょいちょいと手招きを一つ。
すぐに駆け寄って片膝を付いた兵士は、
「張遼隊に伝令。黄河に沿った街道の中間地点に向かい、北上せよ。最速で我らと合流、です。情報遮断に警戒を置きつつ必ず伝令を届けてください」
その後に、追加の伝令を一つ二つ。
御意、の短い声と走り去る背を見て、他の兵もちょいちょいと呼ぶ。
「今日の戦は終わりなので、迎えの準備をしましょうかー」
返答を示した兵が旗を振れば、総勢二百人程度が城壁の上に居並ぶ。少々少なく感じるが、彼女にとっては使いようがある。
「ではー、銅鑼を鳴らし、旗を振ってみましょう。春蘭ちゃんに気付いて貰えるように」
†
「夏候惇様! 程c様よりの合図です!」
駆けてきた兵が告げる。最先端で戦っていた春蘭達の元に合図が為された。
乱戦となりつつも、最終線が途切れていない戦場。よく抜かれずに耐えきったと褒めてやるべきだろう。城壁を見れば幾多の旗が揺れていた。追加の兵がどれだけいるのか、そう思わせる為の撤退を支援する小細工。
春蘭としては、猪々子の心を折れず、敵兵の士気も自分が思い描いていたモノより下げられなかった事が悔やみ処だが……風が下がれというなら下がらなければならない。
軍師の判断を汲まない、春蘭はそんな愚かな将では無い。華琳の命令が事前に為されてある時にだけ、軍師の命令では無くそちらに従うという……何処まで行っても華琳の片腕なのが春蘭である。
「うむ。一当てして後退させよ! 騎馬隊は道を開け!」
言いながら、自身は夏候惇隊の歩兵部隊を引き連れ、流琉の部隊と共にじりじりと下がっていく。まだ攻める、と思わせながら下がるのは戦では通常の事。
横を見れば、猪々子が流琉の部隊に押し出されていた。
左側の敵兵が少なかったことから、流琉が今回の戦でどれだけ春蘭の言いつけを守っていたかが分かる。当然か、と零しながらも春蘭の表情は何処か誇らしげ。
猪々子と目が合った。また強襲を仕掛けて来るかと思えばそうでもないらしく、ふふん、とあちらも誇らしげに笑っている。
「あたいは生き残ったぞ! 夏候惇!」
それは大胆な宣言であった。事実を胸を張って語る彼女は、何を考えての事か。
生きていれば勝ちで、まだ負けてないとでも言いたいのか。再戦を希望しているわけでは無く、先程までのように無茶苦茶な突撃をしてくるわけでも無い。
「あんたもたった一回じゃ物足りないよな? またやろうぜ!」
子供のような笑顔を残していく彼女は、戦場であるのに背を向ける。バカと豪胆は紙一重と言うべきか否か。
――無駄に殺すわけじゃねぇのさ、か。相手が退くならこれ以上は無
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