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乱世の確率事象改変
大剣持ちし片腕が二人
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で明も気付く。自分が無意識の内に猪々子の身を案じていた事に。
 前までの明ならば、絶対に有り得ない確認の言葉。戦略的な目的の為に誰かを犠牲とするのは二人にとって普通であったはずなのに。
 明の表情が歪む。苛立ちと、気持ち悪さを感じて。

――なんであたしは夕に猪々子の事を尋ねた? あたしは夕だけの為に……のはずだったのに。

 ズレた感覚は戻らない。目的の為なら二人で一つだった自分達が、分かたれてしまった。戦でのたれ死のうと気にならなかった存在を気に掛けてしまったのだ。
 後付けで浮かんだ戦略的不利の意見はあった。しかしそれが浮かぶよりも先に、無意識のまま思わず尋ねてしまった。夕だけが大事な明にとっては、余りに異常な事態であった。

「ふふっ」

 柔らかい笑みと綺麗な瞳。
 夕は明が他者を殺したくないと思っていた事に、嬉しさを感じていた。

「文醜が大事。ふふ、うん、それでいいんだよ?」
「ちがっ……違うもん! あたしはあんなバカがどうなったっていい! 夕だけが大事だっていっつも言ってんじゃんか!」

 自身の心が理解出来ない明は、泣きそうになりながら否定した。自分に彼女以外の大切なモノが出来たなんて……認めたくなくて喚いた。
 夕は、ぎゅうと明に抱きつく。大切な宝物を胸に抱く子供のように、優しく。

「気にしなくていいと思う。私と同じ欲張りになったらいい」
「……っ……」

 瞬時に跳ねる身体を抑え付けて、無理やり言葉を呑み込む。嫌だと言い掛けた。それだけは認められない、と夕の想いを拒絶し掛けた。
 彼女が自分を“人”に戻そうとしている事は分かっていたが、直接言われるとここまで違うのかと明は衝撃を受ける。

――受け入れろ、受け入れろ、受け入れろ、受け入れろ、受け入れろ。
 夕がそれを望んでるんだから、あたしはそうならなければならない。自分が心を向けるモノが増えた事を、認めなければならない。

 何度も言い聞かせて抑え付けなければならない程に、大切なモノが増えたと認める事を心が拒絶していた。
 唇が慄く。吐き気も込み上げてきた。胸の中がざわざわと気持ち悪い。
 桂花は確かに大切になった友だ。しかし明が求めたモノでは無く、夕が求めた友達。だから明だけが求めるモノが出来たと気付けば、自分自身を受け入れられない。
 どうにか押し込もうと葛藤していた明の両頬に、白くて細い手が添えられる。
 無理やり合わされた黒は優しい色を浮かべていた。彼女のそんな瞳がより一層、明の心を乱してしまう。

「ゆっくりでいいから。この戦が終わってからゆっくり考えたらいい。だから今、私はあなたに命じよう。この戦ではそれを考えないで。私の言う事だけを、聞いて?」

 諭されると心が徐々に落ち着いていく。考えるなと言
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