第17話 いろいろな嵐
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す。グリーンヒル少将閣下にはつい最近小官もお世話になりました」
つまりあの時のことは『なかったことにしろ』と言いたいワケか。そして余計なことを言ったら少将に言いつけるぞ、と。
レーナ叔母さんの言葉でもないが、なんと大人びたことだ。天真爛漫なアントニナと比べるまでもないし、どちらが俺の好みかと言えば、それも言うまでもない。そして彼女に罪があるわけではないが、彼女の存在の後には、あのグリーンヒルがいる。娘の出会いと憧れを、上手い具合に利用してヤン=ウェンリーを取り込もうとした。娘の幸せも当然考えてのことだろうが、前世地球でもよくある閨閥構築にはいろいろな意味でお近づきになりたくない。
帝国領侵攻でシトレとロボスは責任を取って引責辞任した。だがグリーンヒルは査閲部長に(現在査閲部にいる俺としてはかなり腹の立つ話だが)左遷されただけで、軍に残留することが出来た。
元帥のいないあの時の同盟で大将の地位にあったのはクブルスリー、ビュコック、ドーソン、ヤンそしてグリーンヒルの五名。
仮にクーデターを起こさなかったとしても、ビュコックは老齢でそれほど長く宇宙艦隊司令長官を務めることは出来ない。ドーソンは事務職としては優秀な人材かもしれないが、小心で神経質で人望が薄い。クブルスリーはいずれ本部長になると噂された人物であるが、グリーンヒルのほうが『先任』だ。そしてヤンは有能な軍事指揮官で卓越した戦略家だが、若すぎるほど若い。
つまりグリーンヒルは『いつでも要職に戻れる』環境にあった。ブロンズ中将など後方・情報系の将校にも、ルグランジュ中将のような実働部隊にも人望がある。ビュコックが軍を去った後、ドーソンがボロを出せば、グリーンヒルに復職の可能性すらあるわけだ。しかも今後三〇年は同盟軍の大黒柱になるであろうヤンは娘婿。
俺が転生したこの世界が、原作通りに物事が進むかどうかははっきりしない。だが俺が何も干渉しなければそうなる可能性は高い。あれだけの被害を出して失敗した作戦の参謀長が、辞任あるいは予備役にならないというのは、どう考えてもおかしい。そして復職の可能性すら残している。どうしてそんな奴に近づきたいと思うか。
昼食の場で、アントニナと笑顔で話しながら、こちらを丁重に敬遠するフレデリカの綺麗な横顔を一瞥して、俺は横に座るラリサの質問に耳を傾けつつ思った。
結局、俺はフレデリカが家にいる間、彼女と俺はなんら感情の挟む会話をすることはなかった。一度嵌ったら飽きるまでトコトンのめり込むラリサの性格にはこの時ばかりは感謝しきれない。夕刻になって無人タクシーを呼び、グリーンヒルの官舎への行き先登録をすませると、ボロディン家は総出でフレデリカを見送った。
フレデリカの乗った無人タクシーの姿が見えなくなるまで手を振っていたアントニ
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